ちなみに別の現役社員によると、このような同社の体質が、社内にまで悪影響を及ぼし始めているという。
「社内の風土に嫌気が差し、数年前から他メーカーに転職する人が増えています。特に優秀な技術者が流出し、技術が社内に蓄積されず、顧客企業からの露骨な人材引き抜きが明るみに出て、ウチを出入り禁止にする顧客企業も増えているみたいです」(別の現役社員)
それにしても、もし明るみに出れば自社への信用を失いかねないこうした行為を、なぜ世間の目にさらされている大企業が、社内において堂々と行うことができるのか?
労働問題に詳しい弁護士によると、両社のような大企業は、テレビや新聞などの大手メディア各社に毎年多額の広告費を投入しているケースが多く、報じる側に自主規制が働き、大きく報道される可能性が低いという。また、労働問題は裁判になっても違法性を立証するのが極めて難しいといい、その理由をこう説明する。
「まずソニーのA氏の例ですが、社員は会社に対して労務を提供するという『義務』を負っていますが、『自分が望む内容の仕事をしたい』という『権利(=就労請求権)』は認められないという見解が有力であり、東京高裁の判例もあります(1958年、読売新聞社裁判)。極端に言えば、会社側は賃金を支払ってさえいれば、社員を働かせなくてもよいのです」(弁護士)
ソニーのB氏やオリンパスの件も、「社員に対し明らかな労働基準法違反行為をした」という証拠がない限り、違法性の立証は難しいという。
「企業が社員に嫌がらせをする際には、その方法について顧問弁護士と相談し、ギリギリ違法性がないよう巧妙な手口をとるため、仮に被害者が訴えようとしても、現実的には泣き寝入りを余儀なくされるケースが多いのです」(同)
グローバルに展開するソニーとオリンパス流の、社員を退職に追い込むこうした方法は、果たしてグローバルスタンダードなのであろうか。
(文=サイゾー編集部)