これらの支援策がどこまで有効に機能するのだろうか。相談先が増えたことはメリットだが、「どれも『支援しています』という努力の表明にすぎないのではないか」(前出・中小企業専門のコンサルタント)という見方もある。ある銀行OBは、「事業再生ファンドが中小企業の不良債権を買い取ってどうするのか? 利用価値はないだろう。ファンドがどこまで有効に機能するのか分からない」と疑問を示す。
昨年末、ある中小外食企業の経営幹部会議で、銀行出身の取締役は次のように警鐘を鳴らした。
「世間では、銀行には危機に陥っている企業を支える社会的責任があると言われる。御説ごもっともだ。しかし、銀行が融資する金の出所は預金である。お客様の預金を焦げつかせるわけにはいかないというのが、銀行の置かれた立場だ。そこを理解して銀行と付き合わないと、ボタンの掛け違いになってしまう」
単純な理屈だが、これが金融機関の本音だろう。では、返済猶予を受けている中小企業に残された道は何だろうか? この3月に都内で開かれたセミナーで、銀行出身の経営コンサルタントは次の4つの選択肢を示した。
(1)返済猶予を受けているが、十分な体力のある企業
…中小企業経営力強化資金による経営多角化、あるいは事業転換。
(2)リスケジュールなどによる対応を考慮している企業
…認定支援機関の協力を得て、経営改善計画の作成と実施。
(3)経営の抜本的な改革を必要とする企業
…中小企業再生支援協議会を活用し、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画を作成して実施。
(4)事業の見通しがまったく立たないと判断された場合
…休業、事業閉鎖、廃業。
4つとも公的支援策の活用だが、もはや延命効果を期待できる策ではない。公的支援策は、倒産のソフトランディングに向けたインフラである。経営悪化に陥った中小企業は、金融機関の混乱を避けるために、ゆっくりとしたペースで倒産へと導かれていくのだろう。
(文=編集部)