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すぎもとたかよし「サラリーマン自動車ライターのクルマ業界ナナメ斬り!」

現行型と「ほぼ同じ」ホンダ新型N-ONEの発想の小ささ…N360の後継がこれでいいのか

文=すぎもと たかよし/サラリーマン自動車ライター

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 ホンダが今秋の発売に先駆けて9月11日に先行公開した新型「N-ONE」が、そこそこな話題になっている。

 多くの媒体で紹介されたそのスタイルは、ホンダ自ら「変わっていないようで、すごく変わりました。」というくらい、一見現行型との見分けがつかない。実際ドアパネルなど多くの部分が流用されているそうで、よく見ればグリルやバンパーの形状が若干異なるけれど、まあ現行と「同じ」といっても差し支えない程度だ。

 初代である現行型は、ホンダ黎明期の名車「N360」がモチーフといわれており、「プレミアム」というグレードを設定したことからもわかる通り、Nシリーズのなかでも若干高級仕立て風に差別化された。

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 大ヒット作の「N-BOX」には遠く及ばないものの、その特別感から安定した人気を保っており、だったら外観を大きく変える必要はないだろう。もちろん新型のアップデートとして、プラットホームをはじめ「中身」だけ更新すればいいじゃないか、ということらしい。

 で、果たしてそれでいいのか? という是非が今回の話じゃない。いや、よくはないんだけど、それは新旧で見分けがつかないこと云々じゃなく、そもそもN-ONEという企画自体がどうなんだ? という話である。

 前述のとおりN-ONEはN360をモチーフにしたわけだけど、このクルマは「Nコロ」という愛称を持つほど一時代を飾った名車であり、極めてアイコニックな存在だった。そんな高い価値観を持ったクルマの「後継」が、単に軽自動車シリーズの1台でいいのか? と。

日本車に欠如するタイムレスなクルマづくり

 僕は、N360ほどのブランド力を持つクルマを現代に復活させるのであれば、より特別な存在にするべきだと思っている。端的にいってしまえば、N360はホンダのフィアット「500」あるいは「MINI」になり得る素材であり、財産だと考えているのだ。

 したがって、本来は軽自動車規格になどこだわる必要はない。MINIは随分大きくなってしまったけれど、たとえば5ナンバーだった2代目くらいのサイズになってもいいじゃないか。スタイルもNシリーズとは関係のない、オリジナルのキュートな佇まいをより強く残した唯一無二のデザインで。

 500やMINI同等、内外装には徹底的にクオリティの高い素材を施し、それこそ輸入車と比較検討されるような個性を与えればおもしろくなる。そこに新型フィットのHV(電気自動車)システムなどを与えれば、日本車離れした存在感と日本の高い信頼性の融合も実現する。

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 それで本体価格が250万円になっても、それ相応の付加価値があればいいし、べつに月に5000台も1万台も売る必要はない。その代わり、軽規格から外れることで、それこそ欧州市場で500やMINI、DSブランドなどと戦える存在となれば、かなりおもしろい展開になると思える。

 かつて、日産はパイクカーシリーズを展開した。Be-1やパオなどはクオリティこそ高くはなかったけれど、いまでも人気がある希有な存在だ。「自動車文化」などというと少々口はばったいけれど、日本車はそういう真にタイムレスなクルマづくりに欠けている。

 トヨタは名車「2000GT」のイメージを「86」や新型「スープラ」に反映させ、日産は最新の「フェアレディZ」に初代の影を重ねた。そうして各社が自社の歴史を振り返るとき、ホンダがN360という素材を使って、他社がまねのできないようなクルマを送り出すいい機会だったはず。

 たしかに、現行N-ONEはシンプルでよくまとまってはいるけれど、だからそのままのカタチで2代目をつくるというような、ひどく小さな発想で終わってほしくないのである。

(文=すぎもと たかよし/サラリーマン自動車ライター)

すぎもとたかよし/サラリーマン自動車ライター

すぎもとたかよし/サラリーマン自動車ライター

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、クルマも最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。

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