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すぎもとたかよし「サラリーマン自動車ライターのクルマ業界ナナメ斬り!」

新型「ハリアー」はトヨタ版のマツダ「CX-5」か?…“他社のいいとこ取り”戦略冴えわたる

文=すぎもと たかよし/サラリーマン自動車ライター

 

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トヨタ・新型ハリアー

 新型「ハリアー」の評判がいい。そもそも市場的にSUV人気が継続している上、とにかく「新型ハリアーはスタイリッシュ」と自動車メディアなどで絶賛されている。なるほど、直線基調の無骨な新型「RAV4」と並行開発されたというハリアーのボディは、対照的に流麗で上質なイメージである。

 で、スタイリッシュであること自体はもちろん評価されるべき点だけど、僕がこの新型を見て思ったのは、「これはマツダの『CX-5』じゃないか」というもの。そして「いいとこ取りのトヨタ、健在だな」と。かつてのホンダ「ストリーム」に対する「ウィッシュ」や、日産「エルグランド」に対する「アルファード」など、他社の成功を根こそぎ持って行く、あのトヨタのたくましい商魂だ。

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 ただ、今回は商品企画ではなく、対象がスタイリングに特化しているのが新しい点で、「トヨタの担当デザイナーは、マツダの魂動デザインがやりたかったのか?」と。

 それがもっとも顕著なのはボディサイドの凹面処理で、さすがにハイライトはS字こそ描いてないけれど、いわばC字型を示すかなり近い造形。「魂動デザイン」では光の移ろいを標榜しているけれど、実際ハリアーのプレスリリースには「断面が変化するサイドビュー」とあるし、トヨタのデザイナー自身も「風景の映り込みを意識した」と、ある媒体で語っているのである。

 フロントでも、マツダの「シグネチャーウイング」に対し、同様のモールを施したグリル周りを「シグネチャーランプ」と名付けた。そして、比較的シンプルにまとめたバンパー両端の造形も「魂動デザイン」第2章の発想に近い。近年のトヨタは、この部分をこれでもかと派手な意匠として目立ち度を上げていたので、やはりいきなりな感じである。

 さらに、後方に引っ張ったリアパネルのランプ回りも。ここは、サイドビューでのボディの伸びやかさを表現する手法として、CX-5はもとより、最新の「CX-30」など、マツダでもSUV系で行われている造形だ。

トヨタが巧いのは、単に他社のコピーではないところ

 この「マツダっぽさ」は、実は新型「ヤリス」から感じていた。同車の場合はスタイリングの細かな部分というより、キャビンの大きさをある程度放棄したパッケージングと、その佇まいが現行デミオによく似ているなと。もちろん、そこには「アクア」との棲み分けという戦略があるのは承知しているけれど、それにしてもだ。

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新型「ヤリス」
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「レクサスIS」

 さらに、最近行われた「レクサスIS」のビッグマイナーチェンジを見てオヤオヤと。ルーフの一部以外のパネルをすべて変更したというスタイリングでは、ハリアー同様ボディサイドの凹面が強調され、やはりC字型のハイライトが表出している。トヨタブランドじゃないけれど、アプローチとしてはまったく同じだ。

 ハリアーにしろISにしろ、トヨタが巧いのは、単に他社のコピーではなく、そのエッセンスを用いつつ、より万人にウケる造形にまとめているところだろう。つまり、「魂動デザイン」のクドさのようなものはしっかり取り除かれている。まさに「いいとこ取り」なんである。

 さて、これまた大絶賛の新型車「ヤリスクロス」は、一方で非常にオーソドックスな造形だから、特段すべての車種で「マツダっぽさ」を展開しようということじゃなさそうだ。けれども、それもまたトヨタの巧さのひとつと言えるだろう。「すべてこれで通すぞ」などと力まないのも、「いいとこ取り」の神髄なのである。

(文=すぎもと たかよし/サラリーマン自動車ライター)

すぎもとたかよし/サラリーマン自動車ライター

すぎもとたかよし/サラリーマン自動車ライター

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、クルマも最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。

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