中古車情報メディア『カーセンサー』(企画・制作 株式会社リクルートマーケティングパートナーズ)が選ぶ「カーセンサー・カー・オブ・ザ・イヤー2019」にスズキ「ジムニー(現行型)」が輝いた。2位はV3を逃したマツダ「RX-8(初代)」、3位はBMW「3シリーズ(E90型)」だ。
圧倒的なジムニー人気の理由や2020年の中古車市場のトレンドについて、リクルート自動車総研所長兼カーセンサー編集長の西村泰宏氏に話を聞いた。
女性人気も高まるジムニーの魅力
――ジムニーがイヤーカーとなりましたね。
西村泰宏氏(以下、西村) ジムニーが登場から1年半で首位に躍り出たことは、これまでの常識を覆すセンセーショナルな出来事でした。通常、中古車市場で人気が出るのは発売から数年後です。流通台数が約300~400台になると、価格が安定するからです。しかし、ジムニーの場合は新車の注文が殺到して納車に1年以上かかる事態となり、そのため待ちきれない消費者が中古車を求める動きが相次ぎました。
販売会社の中には、カスタマイズを施すなどして価値を高め、新車時の価格より高く売るケースも少なくありません。まさに、異例の盛り上がりを見せるイヤーカーといえるでしょう。
――ここまでジムニー人気が沸騰している理由はなんでしょうか。
西村 ここ数年、現行型だけでなく以前のモデルにも問い合わせが増えるなど、ジムニー自体が再評価されています。これまでは「ジムニーが好きな人は車好き」という玄人好みの車でしたが、アウトドアやSUVがブームになる中、あえてオーバースペックな車で街中を走るというムーブメントが高まっています。
本来、ジムニーは悪路や林道でも難なく走行できる高い悪路走破性が売りですが、加えて通常の道路も心地よく走れるようにしたのが現行型ジムニーです。そのため、ジムニーを知らなかった若者や、ハードスペックな車に関心がなかった女性も触手を伸ばしています。SNSでは「ジムニー女子」というハッシュタグでジムニーの魅力を発信している女性も多く、キャンプやアウトドアでの利用だけでなく、日常生活シーンでもジムニーの人気が高まっていることが特徴です。
実際、アンケートでは、現行型ジムニーの主な用途として、通勤通学が40%、日常の移動手段は32%で、悪路走行性の高い車を日常で使っていることがうかがえます。
――アンケートでは、現行型ジムニーの購入後の満足度も高いですね。
西村 「大変満足」が40%、「満足」が50%で、「不満」「やや不満」はゼロという結果でした。そもそも、現行型ジムニーを購入する人は消去法ではなく、「これがほしい」という動機で買っています。いわば、ジムニーはライバル不在の車なのです。
RX-8、BMW 3シリーズも高い人気を継続
――ジムニー以外に注目すべきポイントはありますか。
西村 2位のRX-8は17、18年はイヤーカーに輝いており、今後も高い人気が続きそうです。中古車流通量は500台前後を維持しており、平均価格は100.5万円でお得感があります。3位のBMW 3シリーズは2世代前のモデルですが、コスパに優れているため、今も人気がある車です。
――中古車市場のトレンドはいかがでしょうか。
西村 今、中古車市場では200万~400万円の車がよく売れています。販売数が多いのは100万円以内の車ですが、高価格帯の車が売れるトレンドは今年も続くのではないかと思います。背景には、新車の購入を予定していた層が、同額程度で選択肢が広がる中古車に手を伸ばしているという流れがあります。
今は新型コロナウイルスの影響で経済活動がほぼ止まっている状況ですが、この機会に、固有の空間で移動できる車という存在が再評価されるのではないでしょうか。自家用車の利便性や魅力はもちろん、非常時に発揮する価値には、カーシェア、レンタカー、タクシーなどでは代替できないものがあると思います。
(構成=長井雄一朗/ライター)