中古車情報メディア「カーセンサー」(企画制作:リクルートマーケティングパートナーズ)10月号では「国産スポーツ車“速”買いランキング(2019年上半期データ)」を特集し、大きな反響があったという。スポーツ車は一般のクルマと比較して流通量が少なく、中古車市場では買いやすい価格になったスポーツ車の人気が高い。そこで、カーセンサーでは「早く買わないと消えてしまう可能性が高いモデルのランキング」を作成した。カーセンサー編集長の西村泰宏氏に、同ランキングの動向などについて聞いた。
国産スポーツ車の「“速”買い神7」とは
――「国産スポーツ車“速”買いランキング」は注目を集めたようですね。
西村泰宏氏(以下、西村) スポーツ車は一般のクルマに比べて全体的に流通量が少なく、高性能なので新車時の価格が決して安くはありません。そのため、買いやすい価格になった中古車の人気が高いのです。実際、この号は売れましたね。
スポーツ車は、20年前はわかりやすく「馬力」や「速さ」などのスペックが重視されていましたが、今は電動化などにより、その評価基準も多様化しています。そんな時代に、どのようなスポーツ車が好まれるのか。カーセンサーらしい切り口で検証し、すぐに決めないと消えていく可能性が高いスポーツ車が一目でわかるリストを作成しました。その「“速”買い神7」は、次の通りです。
1.ホンダ「シビックタイプR(現行型 FK8型)」
2.トヨタ「スープラ(80型)」
3.スバル「WRX(現行型)」
4.マツダ「ロードスター(現行型 ND型)」
5.マツダ「ロードスターRF(現行型)」
6.日産「スカイラインGT-R(R33型)」
7.日産「GT-R(現行型)」
――それぞれ、ランキングに入った理由をどう分析していますか。
西村 1位のシビックタイプRの中古車価格帯は390万~520万円と高めですが、ユーザーからすれば「この性能でこの価格は安い」という評価です。また、新しいモデルだけに中古車流通量は29台と極めて少ないのですが、1台当たりの問い合わせ数が多いため、いわば早い者勝ちの状態になっています。
2位のスープラは、昨年5月に17年ぶりに新型スープラが登場したことで、スープラ自体の存在が注目されました。新型はBMWとトヨタの共同開発も話題となり人気を博していますが、同時に昔のスープラに注目するユーザーも増加し、中古車価格帯は120万~550万円となっています。状態にもよりますが、価格は70万~80万円ほど上がったのではないでしょうか。中古車流通量は1年半前は150台でしたが、現在は48台と一気に減りました。
3位のWRXは、もともとクルマ好きの支持が高いモデルで、昨年の東京モーターショーでも話題になりました。2019年にWRXシリーズのファイナルエディションが発売され、ファンから惜しまれつつフィナーレを迎えました。コアなファンに狙われるいぶし銀で、中古車流通量は263台、中古車価格帯は150万~800万円です。
――4~7位はマツダと日産のモデルが占めていますね。
西村 4位のロードスターは発売25周年を迎えたロングセラーの第4世代で、15年5月に登場したモデルです。ロードスターはどの世代も人気で手頃な価格帯になってきているので、注目を集めています。中古車流通量は169台で、中古車価格帯は130万~355万円です。
5位のロードスターは電動格納式ルーフを採用したリトラクタブルハードトップモデルのため、中古車価格帯は210万~385万円とやや高めです。中古車流通量は1月1日時点では180台ほどでしたが、今は69台と一気に減っており、消えていくスピードが異常に早い意外な“速”買いモデルといえます。
6位のスカイラインGT-Rはダークホースです。一般的には、この前後のモデルであるR32型とR34型が人気でR33型はそれほど注目されていなかったのですが、R32とR34の人気が高騰しているため、現実的な選択肢としてR33を選択するユーザーが増えています。相場が高騰する前に、と狙うユーザーが増加中で、中古車流通量は46台、中古車価格帯は270万~1500万円です。
1995年1月に発売を開始したモデルのため、今年、発売から25年が経過すると、アメリカで生産されていなかったモデルでもクラシックカー扱いとなり、輸入が可能となる「25年ルール」の解禁対象となります。そのため、このR33を買ってアメリカに輸出する準備を始めている業者もおり、今後は価格が大幅に上昇すると予測しています。
7位のGT-Rは、02年のGT-R(R34型)生産終了から6年を経て復活したモデルです。これは、20年度が製作最終年度です。性能面ではR34よりも高いため、資金的に余裕があるのであれば、こちらをおすすめします。中古車価格帯は400万~2080万円で、中古車流通量は191台です。消えていくスピードはそれほど早くはないのですが、1台当たりの問い合わせ件数が多いモデルです。
――今後のスポーツ車の動向については、どう見ていますか。
西村 ランクインしたモデルに共通するのは、流派は異なるもののドライブして楽しいクルマであるということです。スポーツ車は、従来のクルマ好きと言われる中高年層だけでなく若者層も注目しています。クルマのコモディティ化が進み、単なる移動手段となりつつある一方で、クルマ好きの耳目を引いたり運転する楽しさを訴求したりするようなモデルも相次いで投入されています。最近、国産スポーツ車の生産が再開されているので、これから盛り上がっていくことが予想されます。
(構成=長井雄一朗/ライター)