世界販売の内訳はトヨタが871万7000台、ダイハツが87万6000台、日野が15万5000台だった。
トヨタの2011年の世界販売は、東日本大震災やタイの大洪水による大規模の減産などでGMとVWに抜かれた。12年は反日騒乱デモが起きた中国での販売不振を受けて当初の販売計画を10万台引き下げたが、北米では中型車のカムリやカローラ、タイやインドネシアなどの東南アジアでは新興国戦略車(ミニバンやピックアップトラック)の販売が好調だった。
首位に返り咲いたのは、米国の自動車市場が回復したことが大きかった。12年の米国の新車販売台数は1449万台で、1年前より13.4%増えた。84年以後で最も高い伸び率だ。13年は1550万台を超え、14年は1600万台を突破する見込みだという。そうなると、リーマン・ショック直前の07年の水準にまで回復する。
米国市場の復調で、トヨタの米国での新車販売台数は、前年比26.6%増の208万2504台と大幅に増えた。前年実績を上回るのは5年ぶりのこと。200万台の大台を超えるのは4年ぶりである。米市場でのシェアは1.5ポイント上昇し14.4%。GM、フォード・モーターに続き第3位だった。ホンダは24.0%増、日産自動車は9.5%増と、日本勢はそろって好調に推移した。
米国の自動車アナリストは「米自動車市場が、再び黄金の卵を産むガチョウになった」と診断。通信社のブルームバーグは「市場拡大の恩恵はGMとフォードなど米国メーカーが最優先で享受し、その次にトヨタなどの日本のメーカーが利益を得るだろう」と報じた。
11年に世界首位だったGMは中国など新興国と米国では好調だったが、債務危機が影響した欧州で8.2%減。11年に2位だったVWはグループ初の900万台超えとなったが、ドイツを除く欧州で6.5%減と不振。トヨタは欧州市場でも2%増の83万台とプラスを維持した。
一方、世界最大の自動車市場となった中国では、欧米韓と日系メーカーが明暗を分けた。沖縄県・尖閣諸島問題で顕在化したチャイナ・リスクの影響を、日系メーカーがモロに受けたからだ。
12年の中国での新車販売台数は1930万台。前年より4.3%増え、4年連続で世界一の自動車市場となった。だが日中関係の悪化で、中国各地で日本製品の不買運動が発生し、日本メーカーは苦戦を強いられた。トヨタは84万467台で12年の目標だった100万台を大きく下回り、02年に乗用車の現地生産を開始して以来初のマイナス成長となった。日本勢の中国での年間販売台数は、現地に生産拠点を持たない富士重工業を加えた日系7社の合計で前年比7.6%減の312万台にとどまった。
日本勢からシェアを奪う形で、米欧韓のメーカーが販売を伸ばした。GMが11.3%増の283万台、VWが24.5%増の281万台。韓国・現代自動車、米フォードも2ケタ増を達成した。
中国市場の13年の新車販売は、7%増の2065万台と予測されている。しかし、渋滞緩和策として大都市で導入されているナンバープレートの発給規制が広がれば、伸び率はさらに鈍化するとの見方が出ている。
それでは、足元の国内はどうか。12年の国内新車販売台数(軽自動車含む)は前年比27.5%増の536万9721台。4年ぶりに500万台の大台に乗せ、リーマン・ショック前の水準まで回復した。11年に東日本大震災が起きたことで買い替え時期が後ろにずれたことや、12年9月下旬まで続いた7~10万円のエコカー補助金が新車販売を底上げした。消費者の嗜好が低価格で燃費性能が高い軽自動車やハイブリッド車(HV)に移っていることが鮮明になった。
アクアやプリウスなどのHVが売れたトヨタは、同40.9%増の169万2228台と急伸した。「N BOX」など軽自動車へのシフトを急いだホンダは、同48.0%増の74.5万台。軽自動車のダイハツが同23.5%増の67.7万台、スズキが同21.7%増の67.3万台と好調。HVと軽自動車の両方で出遅れた日産は同11.6%増の65.9万台にとどまり、5位に後退した。
13年の国内は一転して厳しくなる。エコカー補助金の“特需”が消え、その反動で販売が落ち込む。4月に予定されている自賠責保険料の1割強の引き上げも、消費者の購買意欲をそぐ。業界が求めている新車購入時の自動車取得税、車検ごとの自動車重量税の撤廃も見通しが立っていない。
そのためトヨタは、13年の国内の販売計画を12年と比べて17%低い140万台に設定した。国内の新車販売は2割程度減少するというのが業界の見方だ。経済産業省は取得税と重量税が存続し、消費税が15年に10%となった場合、国内新車販売は93万台減少すると試算している。これは業界2位のホンダと同6位のマツダを合わせた年間販売台数に匹敵する。自動車業界に与えた衝撃は大きかった。日本自動車工業会は2013年1月31日、国内の新車販売台数を前年比11.7%減の474万台強と予測した。2年ぶりのマイナスだが、かなり楽観的な見通しだといえる。軽の比率は過去最高だった12年からさらに1ポイント高まり、37.9%とみている。こちらは少し低すぎで、軽の比率が4割を超えることもありそうだ。
各社は成長の軸足を海外に置く。トヨタは、グループの13年の世界販売台数を991万台とする。12年の実績974万台に比べて1.7%多く、2年連続で過去最高の更新を目指す。円安基調が続けば輸出も伸び、世界初の1000万台も視野に入ってくる。
だが、欧州市場が回復すればGMとVWの差は縮まり、尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化で大差がついた中国の販売動向次第ではトヨタの首位は安泰ではない。再び3位に転落する可能性もゼロではない。
今後の首位争いの主戦場は、南米や東南アジアなどの新興国に移る。13年の首位攻防を占うポイントは2つ。1つはタイなどの東南アジア市場。トヨタの収益を押し上げているのは、タイなど東南アジアで売れているピックアップトラック、ミニバン、SUVだ。共有するプラットホーム(車台)から3つの車種が生産され、いずれも販売好調なのだ。
もう1つが、明るさを取り戻した北米市場。米国で新車販売が回復してきたことが、トヨタにとって追い風となる。
トヨタが苦戦する南米や中国では、GMとVWが盤石の体制を築いている。トヨタが世界一の座を守り抜くカギは、北米とタイ、インドネシアなどの東南アジア市場が握っている。
(文=編集部)