トヨタvs日産の熾烈争い!EV低迷で次世代エコカーの本命?燃料電池車開発競争
「第9回国際水素・燃料電池展」が2月27日から3月1日まで、東京ビッグサイトで開催された。トヨタ自動車は「FCHV-adv」、日産自動車は「X-TRAIL FCV」、ホンダは「FCXクラリティ」のFCVを出展。試乗会もあって盛り上がった。日産や三菱自動車の電気自動車(EV)の販売が極端に伸び悩んでいることを背景に、FCVに対する注目度が高まっている。次世代エコカーの本命は電気自動車からFCVに取って代わったといっていい。
FCVとは、水素と空気中の酸素を化学反応させてつくった電気で走るクルマのこと。ガソリン車のように二酸化炭素や有害物質を出さない。水だけを出す、地球にやさしい究極のエコカーと呼ばれている。
FCVの開発をめぐり、自動車メーカーの合従連衡が活発になっている。今年1月下旬、日米欧の大手自動車メーカーが、相次いでFCVに関する技術提携を発表した。
まず1月24日、トヨタと独BMWが共同開発について合意した。トヨタは2015年発売のFCVの基幹技術をBMWに供与し、20年に次世代型の基幹システムを共同で開発する。次世代電池などの共同研究も行う。「共同開発したFCVの量産のメドは20年」(内山田竹志・トヨタ自動車副会長)という。
その4日後の1月28日、日産がFCVの共同開発で独ダイムラー、米フォード・モーターと提携した。仏ルノー・日産連合はダイムラーと包括的な戦略提携を結んでおり、FCVの開発も重要な提携案件のひとつになっている。一方、ダイムラーはフォードとFCVの心臓部といえる燃料電池の共同開発を行っており、ダイムラーを介して日米欧のFCVの大連合に発展した。今回の提携にルノーは参加していないが、日産の親会社という関係上、ルノーが関与するのは間違いない。3社は17年に、個別に量産車を市販するとしている。
日本のFCVは、02年、ホンダ・FCXとトヨタ・FCHVがリース方式で市販第1号となった。03年にはFCHVバスをトヨタ・日野自動車が開発、試験運行された。
08年には、ホンダがFCXクラリティをリース販売した。しかし、インフラの整備などさまざまな高いハードルがあり、実用化への道は険しかった。
リーマン・ショック後は、メーカーの研究開発はハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)にシフトした。08年のリーマン・ショックで大きな打撃を受けた米ゼネラル・モーターズ(GM)やクライスラーが、方針を転換したのが大きかった。
EVが主流という時代の流れ(そんな流れあったの、といいたいけど)のなかで、FCVの早期の量産化を言い続けてきたのがトヨタとホンダだった。ハイブリッド車→プラグインハイブリッド車(PHV)→電気自動車→FCVという流れで開発が進むと考えている技術者が多い中で、トヨタとホンダは突っ張ってきたわけだ。
ここにきて、各社がFCV連合の結成を急ぐのは、EVの世界販売の低迷が大きな要因だ。日産は10年末に世界初の量販型本格EV「リーフ」を投入し、エコカーの先頭を走ってきた。しかし、発売からの累計世界販売は約5万台にとどまる。EVが普及しなかったのは、1回の充電当たりの走行距離が230キロメートル程度と短いためだ。
これに対して、FCVは約2倍の500キロメートル走れる。EVの本家を自負していた日産も、FCV開発に舵を切った。もちろん、EVに白旗を掲げたわけではない。「大きな車では航続距離の長いFCVを選択するといった具合に、EVとFCVの特性をそれぞれ生かす」(志賀俊之・日産COO)と説明している。
トヨタ・BMW連合、日産・ダイムラー・フォードの3社連合が出来上がったが、ホンダは独自路線を貫く。数社でやれば、研究開発費の重荷から少しでも解放される。グループを作る、これが一番の理由だ。
主導権争いから取り残されたのは、米GMである。経営破綻(倒産)から再起したGMが、国際(統一)規格実現のカギを握る存在であることに変わりはない。
GMが独フォルクスワーゲン(VW)と組んで第三極を形成するのか。2つの連合のどちらか一方に加わるのか。GMが加わった方が絶対的に有利になる。これで勝負がつくかもしれない。だからGMの動向からは目を離せない。
合従連衡が実効を上げれば、FCVの2~3年後の市販が現実味を帯びる。これまで一部のマニアを除き消費者にほとんど知られていなかったFCVが、次世代エコカーの本命として脚光を浴びる日は近いかもしれない。
(文=編集部)