ここ数年、中古車市場が拡大している。中古車情報メディア「カーセンサー」(企画制作:リクルートマーケティングパートナーズ)が5月に発表した「カーセンサー中古車購入実態調査2018」によると、中古車市場規模の推計は前年から約4000億円増加し3兆4396億円に達した。延べ購入台数(約261.9万台)と平均単価(131.3万円)は、ともに3年連続で増加している。
背景には、新車購入を検討する層が最終的に中古車を選択している流れがあるという。中古車業界の現状と見通しについて、リクルート自動車総研所長兼カーセンサー編集長の西村泰宏氏に話を聞いた。
中古車市場、なぜ拡大?
――中古車市場が拡大している要因はなんでしょうか。
西村泰宏氏(以下、西村) 昨年の調査では「市場規模の推計が3兆円を超えた」ということが大きなトピックスでしたが、さらに前年から約4000億円増加し、年間3兆4396億円に拡大しました。大きな要因には、新車購入検討層が中古車を購入したことによる中古車購入単価の増加が挙げられます。
中古車購入単価の平均は131.3万円で、前年から10.4万円増加しています。購入単価の増加は200~400万円の価格帯の購入者が増えたことによるもので、同価格帯で新車購入を検討していた層が中古車を選択するようになったのでしょう。実際、カーセンサーへの問い合わせ数でも、同価格帯の車種は2017年と2018年を比較して27%増加しており、高価格帯の中古車の注目度が上昇していることがうかがえます。
――なぜ200~400万円の中古車を選ぶ人が増えているのでしょうか。
西村 背景には、「新車価格の上昇」と「中古車購入に対する心理的ハードルの低下」があると思います。
まず、新車の購入を検討したのに購入しなかったもっとも大きな理由のうち、「最終的な総支払額に予算が足りない・なかったから」という項目がもっとも上昇しています(2016年19.0%→2018年19.8%)。最近の新車は環境への配慮や安全性向上のための先進装備などにより、価格は上昇傾向にあります。そのため、以前と同じような車種を検討していたとしても、手が出しにくくなったと感じる消費者も多いのでしょう。
次いで、「中古車を購入した・したくなったから」という項目が上昇していることから、予算の事情で新車から中古車にシフトした心理がうかがえます。200~400万円の価格帯ではミニバンやSUVを検討する人が多いと思いますが、中古車にはコストパフォーマンスの良いクルマが流通しています。
たとえば、新車では簡単には手が出にくい価格帯のミニバン、トヨタ「ヴェルファイア」(2015年~)が平均385.5万円、クロカン・SUVのBMW「X3」(2011~2017年)が平均310.6万円で購入できるなど、中古車であれば選択肢が増え、購買意欲をかき立てられるのではないでしょうか。
――そういった事情を背景に、中古車の購入を検討する人が増えているのですね。
西村 「1年以内に中古車購入検討をした」が2016年の5.4%から2018年では5.8%に、「1年より前に中古車購入検討をした」が同37.9%から同39.8%に、それぞれ上昇しました。この2つを合計した「中古車購入検討経験者」を見ると、2016年の43.3%から2018年では45.6%に伸びています。当初は新車購入を検討していた層が「予算が足りない」「クルマの選択肢を増やしたい」などの理由から、最終的に中古車を購入するケースが増えていると見ています。