“名車”と呼ばれるクルマがある。正確な定義こそないが、ファンの心をつかんで離さないクルマだ。4月に千葉・幕張メッセで開催された「オートモビル カウンシル2019」では歴史的な名車が勢揃いし、中古車情報メディア「カーセンサー」(企画制作:リクルートマーケティングパートナーズ)はトヨタ「スープラ(A80)」を展示した。
クルマ離れすら叫ばれるなかで、なぜ名車は人々を惹きつけるのか。また、名車の条件とは何か。リクルート自動車総研所長兼カーセンサー編集長の西村泰宏氏に話を聞いた。
スペックだけでは計れない名車の価値
――「カーセンサー」が考える名車とはなんでしょうか。
西村泰宏氏(以下、西村) クルマは住宅と同様にライフサイクルが長く、20~30年ほど使われ続けます。ファーストオーナーが平均7年間乗り、中古車として流通後も、セカンド、サードのオーナーが所有します。
――「カーセンサー」5月号では名車を特集していましたね。
西村 レーシングドライバーの脇阪寿一さんにインタビューしていますが、「名車は最初から名車ではなくて、みんなが名車として育てていくんだ。誰かがストーリー付けして熱量を上げる行為が挟まるからこそ名車になる」という言葉がすべてを物語っていますね。また、クルマは安全基準などが変わることで生産中止になるケースがありますが、そんな絶版名車は特に価値が高まります。
――これから名車となりそうな車種はありますか。
西村 数十年後に評価が大きく上がっている可能性がある“次期名車”を選定しました。以下の16車です。
スバル「BRZ(現行型)」・トヨタ「86(現行型)」(中古車価格帯120万~730万円、以下同)
マツダ「ロードスター(現行型)」(150万~380万円)
マツダ「マツダスピードアテンザ(初代)」(40万~180万円)
スバル「インプレッサWRX STI(GDB型)」(140万~310万円)
トヨタ「マークX GRMN(現行型)」(620万円)
スズキ「スイフトスポーツ(現行型)」(140万~270万円)
スズキ「アルトワークス(現行型)」(90万~280万円)
三菱「ギャランフォルティススポーツバック(初代)」(80万~170万円)
日産「ノートNISMO S(現行型)」(120万~310万円)
三菱「パジェロ ショート(4代目)」(100万~330万円)
トヨタ「FJクルーザー(初代)」(180万~440万円)
日産「フェアレディZロードスター(2代目)」(220万~340万円)
スバル「レガシィB4 ブリッツェン(初代)」(40万~80万円)
ホンダ「シビック タイプR(FD2型)」(120万~350万円)
フォルクスワーゲン「ゴルフV R32」(70万~170万円)
BMW「M5(E60型)」(160万~420万円)
いずれも熱いスピリッツを感じるクルマで、すでに名車と思って乗っている方もいるでしょう。名車か否かはユーザーの熱量がかかわってくるので、単純に燃費や走行性能、排気量だけでは計れないものがあります。そのため、多様な価値観が反映され、クルマに対して感情移入するわけです。いわばアートの世界と一緒ですね。