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スシロー「ティー版スタバ」宣言、国内500店舗へ…マックOB率いる「ゴンチャ」を猛追

文=有森隆/ジャーナリスト
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シェアティー HP」より

 スシローグローバルホールディングス(GHD)は事業領域の拡大とグローバル展開を加速し、さらなる成長を進めるため社名を変更する。新社名はFOOD & LIFE COMPANIES。日々の食をおいしくすることで、顧客の生活だけでなく人生までを豊かにする夢を実現する仲間、という意味を込めた。2020年12月24日開催予定の株主総会で決議し、21年4月1日から新しい社名となる。回転寿司「スシロー」のブランド名は変えない。

 1984年の創業以来、回転すしスシローの国内展開を進め、同業界で売り上げトップとなるまで成長した。2011年から海外展開を開始し、現在、4つのエリアへ進出している。17年、大衆寿司居酒屋「杉玉」の出店を始め、今年は台湾茶専門店「Sharetea(シェアティー)」を展開するなど、事業を拡大中だ。

台湾茶専門店「シェアティー」はお茶のスタバを目指す

 スシローGHDがカフェ事業に参入した。8月20日、台湾茶専門店「Sharetea(シェアティー)」を新宿マルイ(東京・新宿区)の本館にオープンした。シェアティージャパンは「ちょっとの上質を、毎日の贅沢に。」をコンセプトに、本格的な台湾茶を手ごろな価格で提供するという。ドリンクメニューはストレートティーおよびティーラテが各5種類。フルーツティーが3種類。タピオカ入りはタピオカミルクティーだけだ。価格設定は看板商品の「定番台湾茶」が350円(Mサイズ、税抜き) から。シェアティーは台湾発のカフェで、世界で500店舗以上を展開している。

 スシローは20年2月、グループのスシロークリエイティブダイニング(大阪府吹田市)が70%、台湾企業が30%出資する合弁会社Sharetea Japan(東京都千代田区)を設立した。社長はアパレル大手、ワールドで10代女子向けブランド「ピンクラテ」事業でトップを務めた経験をもつ小林哲氏。かつてワールドの専務だったスシローGHD社長の水留浩一氏がスカウトし、スシロー初のカフェ事業の責任者に据えた。顧客の年齢層が比較的若いカフェでは、ファッション感覚が求められることから小林氏に白羽の矢が立った。「シェアティーは全国500店舗を目指し、ティー版のスターバックスコーヒーを目指す」と小林氏は意気込みを語っている。

 台湾茶といえば、19年に日本市場を席巻した「タピオカブーム」が記憶に新しい。台湾発のティー専門店「ゴンチャ(Gong cha)」や「春水堂」には、タピオカミルクティーを買い求め大勢の若い女性が列をなす光景が見られた。スシローは回転寿司に次ぐブランドとしてシェアティーを選んだ。先行するゴンチャを追いかける。

ゴンチャジャパン社長に原田泳幸氏が就任

 19年12月1日、世界17カ国で1100店舗の「ゴンチャ」を運営するゴンチャジャパン(東京・渋谷区)の会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)に原田泳幸氏が就任した。原田氏は1997年、アップルコンピュータ(現アップルジャパン)社長。米マクドナルドにヘッドハンティングされ、2004年、日本マクドナルドホールディングスに送り込まれた。会長兼社長兼CEOとして全権を握り、マクドナルドの再生に辣腕を振るった。退任後は14年、ベネッセホールディングスの会長兼社長に就いたが、16年、不本意なかたちで退任した。

“プロ経営者”の原田氏は今回、台湾茶のゴンチャジャパンのトップに招かれた。ゴンチャは06年に台湾で創業。日本では15年に東京・渋谷に1号店を出し、近年のタピオカブームの先駆けとなった。

「ゴンチャ」を展開するゴンチャグループを、米国のプライベート・エクイティファンド、TAアソシエイツが買収した。TAはグループ会長にマクドナルドのアジア太平洋地区を担当したピーター・ロッドウェル氏を、日本法人のトップに原田氏を起用した。原田氏はゴンチャグループのグローバルシニアリーダーシップチームメンバーに就任した。マクドナルドのOBコンビで台湾茶カフェの世界展開を進めていく。

 原田氏が社長に就いたとき、ゴンチャの国内店舗は51店だったが、その後、急拡大。年内には90店舗に達する。ゴンチャが目指すのも、台湾茶のスタバ版だ。原田氏はタピオカのイメージが強すぎることに危機感を抱く。10月16日、初のフードメニューとして3種のおかゆを発売した。コーヒーメニューも全店舗に広げ、タピオカへの依存からの脱却を急ぐ。

スシローGHDの今期純利益63%増の見通し

 スシローGHDの20年9月期連結決算(国際会計基準)は、売上高に当たる売上収益が前期比2.9%増の2049億円、営業利益は17.1%減の120億円、当期利益は35.5%減の64億円だった。新型コロナウイルスの影響で既存店売上高は4月に半分に落ち込んだ。家賃などの固定費もかさみ利益を押し下げた。

 21年9月期は業績の回復を見込んでいる。売上収益は20年9月期比22.3%増の2506億円と過去最高を更新する見通し。営業利益は43.4%増の173億円、当期利益も63.5%増の105億円と大幅に改善する。テイクアウトで巣ごもり需要を獲得するなど既存店の売り上げが堅調。10月の既存店売上高は4%のプラスだった。21年9月期は積極出店を進める計画。国内は586店から640店前後に増加する。38店を展開する海外も最大28店を新規出店する。中国本土への進出を検討するほか、都市封鎖(ロックダウン)などの影響で延期していたタイへは21年春に出るとしている。

 株式市場は積極投資を評価した。株価は11月10日に3565円をつけ、株式分割を考慮して上場来高値を更新した。21年9月期の大幅増益を好感した買いが集まった。

 ファミリー層を中心とした集客力の高さからスシローは「勝ち組」と評価されている。

(文=有森隆/ジャーナリスト)

有森隆/ジャーナリスト

有森隆/ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

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