5月、広告代理店・東北博報堂(仙台市青葉区)の執行役員が暴行容疑で、宮城県警に逮捕されていたことがわかった。
いわゆるDV(家庭内暴力)容疑だが、地元メディアでは、ほぼ報道ゼロ。この異常な状況に、事情を知る関係者の間ではさまざまな憶測が飛び交っているようだ。なかには「大手広告代理店たる博報堂に、地元メディアが忖度した証左だ」と憤る声もあるという。
宮城県警の大和警察署は5月20日、暴行事件の容疑者を逮捕したと記者クラブ向けに発表した。19日午後7時ごろ、49歳の男性会社員が自宅で、48歳の妻に対して頭髪や襟元を掴み、引っ張ったり揺さぶったりしたという容疑だ。
この「男性会社員」が、同社の執行役員だった。東北地方のメディア関係者が明かす。
「地元・宮城県の報道機関は、少なくとも数社が同社の執行役員だと把握していたようです。容疑者の名前をインターネットで検索すると、社名と肩書きが出てきます。もちろんネット情報を鵜呑みにしたのではなく、取材を行い、きちんと裏を取った社もあったようです」
昨今、DVに対する世間の目は厳しい。「妻の髪や襟を引っ張った」という行為の受け止め方はさまざまあるかもしれないが、ニュースバリューは決して小さくないはずだ。
だが地元メディアは沈黙を守った。実際、ネットで「東北博報堂」「役員」「暴行」「逮捕」と検索しても、何も出てこない。別の関係者が打ち明ける。
「当り前ですが、新聞社だろうがテレビ局だろうが、広告がなければ経営は成り立ちません。少なくとも何社かの人間が正確な情報を上へ報告したはずなのに、どこの社も報じていない。こうなると、各社上層部の忖度を疑われても仕方ないでしょう」
一方、こんな声もある。
「地元紙の河北新報が、なぜか県警の広報から数日後、『会社役員』という肩書きで短く報道していました。ニュースとして報じたのだから、少なくとも河北新報は忖度しなかったと見ることもできますし、逆に忖度を隠すためのアリバイ記事と勘繰ることも可能です」(前出・東北地方のメディア関係者)