数年前、筆者の旧知のFIFA(国際サッカー連盟)公認代理人(当時)が、こう漏らしたことが強く記憶に残っている。
「日本で代理人がついているサッカー選手の割合は何%程度かご存じですか? 今は少し改善されつつありますが、それでも全体の5%程度です。海外の強豪国だと、ジュニア時代から代理人がつくケースがスタンダード。そして、ほぼ将来的にはすべての選手に代理人がつき、マネジメントを行う別のスタッフもつくようになります。それだけ日本のサッカー界が閉鎖的で、世界基準ではないひとつの結果だと思います」
その後、やや数字は増加しているが、それでも劇的な変化にまで至っていないのが現状だ。代理人とは、選手の移籍、年俸交渉などでクラブとの交渉を代理で行う人物を指す。契約金や給与からのフィーを生業とする、プロフェッショナルな職業といえる。
2015年4月、長年にわたりサッカー界のスタンダードだった「FIFA公認代理人制度」が廃止され、基本的には誰でも代理人として登録できる「仲介人制度」がスタートした。同制度の導入によって風通しが良くなり、移籍の際のハードルが下がり、移籍が活性化するのではないかと期待する声もあった。
ところが、実際には移籍の際のトラブルが多発していると嘆く関係者は多い。
「FIFA公認代理人制度の廃止による日本への直接的な影響といえば、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)のクラブを食い物にする、海外の代理人の存在が挙げられます。給与の水準が下がっているとはいっても、Jリーグは給与の未払いや遅延といった金銭面での不安が少ない優良なリーグです。代理人たちにとって、魅力ある市場であるのは間違いありません」(前出・元FIFA公認代理人)
実務的な面でも、仲介人制度の導入による弊害も生まれたという。
「FIFA公認代理人は日本では数えるほどしかおらず、Jリーグ規約によって、『弁護士資格並みに困難』といわれるほど、資格取得のハードルも高かった。その分、語学力や交渉力など、プロとしての技術を持ち合わせていました。ただ、仲介人制度になり、なんの資格も経験もない人が続出しています。その選手と関係性があるというだけで、交渉のテーブルに立っているのです。常識的に考えて、問題が起きないわけがありません」(Jクラブ関係者)