6月に開催された株主総会の特徴は、株主提案が前年より45件多い212件になったことだ。株主提案を受けた企業数も3社多い40社と過去最多になった(三菱UFJ信託銀行調べ)。注目されたのは、物言う株主による株主提案だった。村上世彰氏が率いた投資ファンド・旧村上ファンドの流れを汲む、物言う株主が存在感を高めた。
村上氏の長女・野村殉氏とレノの連合が黒田電気に勝利
電子部品商社、黒田電気の株主総会が6月29日に開催され、旧村上ファンド系の投資会社レノが提出した社外取締役を選任する提案が賛成多数で可決された。物言う株主の提案が可決されたのは、2009年にアデランスホールディングス(現アデランス)の総会で米スティール・パートナーズが推す取締役選任案が可決されて以来、8年ぶりとなる。
黒田電気が総会後に開示した臨時報告書によると、レノの株主提案の賛成率は58.64%だった。村上氏の長女で投資家の野村殉氏が黒田電気の筆頭株主だが、レノは野村氏との共同保有分を含めて議決権ベースで37%を持っている。つまり、個人株主など少なくない株主がレノの提案に賛成したことになる。
レノ側はシャープ向け取引の減少で苦戦する黒田電気に対して、他社との経営統合や自社株買いによる株主への利益還元の拡充を訴え、その推進役として安延申氏の社外取締役への選任を求めた。安延氏は村上氏の元上司の元通産官僚で、一橋大学大学院客員教授を務めている。
レノは15年6月の株主総会で、村上氏ら4人の社外取締役の選任提案を出したが、この時は否決された。今回は、安延氏1人に絞り込み、レノ以外の株主に受け入れられやすくした。
黒田電気は総会前の取締役会で、レノ側の提案に反対を表明していた。米議決権行使会社インスティテューショナル・ シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、株主提案に賛成を推奨していた。だがISSと同業の米グラスルイスは反対を推奨するなど、見解が真っ二つに割れた。
黒田電気の総会の焦点は、株主提案が可決されるかどうかだった。結果はレノ側の勝利。6人の取締役選任の議案は、細川浩一社長の賛成率は54.54%と、かろうじて過半数を上回った。ほかの取締役の賛成率も1人を除いて54~56%と低く、経営陣に厳しいものとなった。
レノ側が主張している他社との経営統合をめぐり、今後、会社側と安延氏が真っ向から対立することになる。
村上氏側が持っているカードは2枚ある。村上氏が2年前に大株主で、現在は野村氏がトップに座っているC&Iホールディングスが筆頭株主(9.4%保有)の独立系エレクトロニクス商社のエクセルと、同じくC&Iが筆頭株主(9.6%保有)で、野村氏が第2位の株主(9.5%)の三信電気だ。三信電気のルーツはNEC系で、今はルネサスエレクトロニクスの半導体製品を主に扱っている。
黒田+エクセル+三信電気が形成されれば、半導体商社の再編は本番を迎えることになる。