夏休みといえば旅行シーズンだが、今年の夏は例年に比べて人気が高まっている。
JTBが7月4日に発表した「2017年夏休み(7月15日から8月31日)の旅行動向」の見通しによると、総旅行人数は7733万人で前年比0.8%の増加。海外旅行者は273万人で前年比3.4%の増加と、過去2番目の旅行者数となった。
さらに旅行費用も海外は24万2000円と前年同期から2万5700円(11.9%)増えている。内閣府は6月の月例経済報告で国内景気の基調判断を「緩やかな回復基調が続いている」に引き上げた。景気判断の上方修正は16年12月以来6カ月ぶりだが、17年夏季の大手企業のボーナス平均額は前年比のマイナス4.56%の91万7906万円(6月9日日本経済団体連合会発表)と12年以来5年ぶりに前年を下回った。
さらに同調査で行った「今年の夏の生活や旅行について」というアンケートによると、「昨年より収入が減った」と答えた人は23.3%。「昨年より収入が増えた」と答えた15.2%を大きく引き離し、「今年の夏はボーナスが減りそうだ」が7.5%、「今年の夏はボ―ナスが増えそうだ」の4.7%を上回った。つまり多くの人は収入が減少したと感じているということだ。
さらにこのアンケートでは「先行きわからないので大きな支出控えておきたい」と答えたのは42.0%。半数近い人が少しでも無駄使いはしたくないと考えているようだ。
一方、旅行に対する考え方は大きく変わっている。以前なら旅行は単なる余暇であり、無駄な支出の筆頭にあがってもおかしくない。ところがこのアンケートで「今後の旅行支出に対する意向の変化」を聞いたところ「支出を増やしたい」と考えている人は18.3%、前回よりも3.5ポイント増加、逆に「支出を減らしたい」と考えている人は24.3%で2.9%減少している。ちなみに今年の夏休みの国内旅行の平均費用の推計は3万4400円(2.1%)、海外旅行は前述のように24万2000円(11.9%)、旅行消費額の推計が3兆2269億円(5.2%)、国内2兆5663億円(2.8%)、海外6606億円(15.7%)となっている。
こうした傾向についてJTBの広報担当者は次のように語っている。
「実際に大企業のボーナス平均額も下がっていますし、家庭的には節約しようという機運が高まっているのはこのアンケートからも明らかになっています。そうしたなかでも旅行の費用を増やしたいという機運が生まれてきているのは、旅行が生活の一部になってきているということなのではないでしょうか。必ず年に何回か旅行に行くという家族も増えているようです。さらに働き方が変わり長期の休暇が取れるようになったことも、大きな要因としてあげられるのではないでしょうか」
日本人の価値観も昔に比べると大きく変わってきたようだ。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)