7月にJTBが発表した「2016年夏休み(7月15日~8月31日)の旅行動向」によると、「(国内・海外を合わせた)総旅行人数は7745万人(前年比マイナス0.7%)と微減」とある。また、国内旅行の平均費用は1人当たり3万3700円で前年比マイナス2.9%、金額にして約1000円減だという(交通費・宿泊費・土産代・食費など旅行中の諸費用を含む)。
同リポートでは、「今夏の生活者の心理としては、雇用や賞与は改善されているものの、今後の生活への経済的な不安から財布の紐は固くなっている。しかしながら、旅行に関しては、できる範囲で工夫して楽しみたい、という気持ちの人が多いと考えられる」と分析している。
なお、国内旅行の利用交通機関は、64%が乗用車、次いで23.8%が鉄道となっている。今回、この交通コストを下げる方法について調べてみた。
車で旅行なら高速道路の「ETC周遊割引」
まずは、車にかかわる費用だ。多くを占めるのは高速道路料金だろう。高速道路会社各社は、定額料金で指定区間の高速道路が乗り放題になる、「ETC周遊割引商品」を提供している。
仕組みはこうだ。指定された発着エリア内のインターチェンジ(IC)から高速道路に乗り、周遊エリア内の高速道路は乗り降り自由、帰りはまた発着エリア内のICで降りる必要がある。鉄道のフリーきっぷの高速道路版と思えばいいだろう。利用できるエリアや期間によって料金は異なる。
NEXCO 東日本では「ドラ割」、NEXCO 中日本では「速旅(はやたび)」、NEXCO 西日本では「みち旅」という名称で発売されている。
NEXCO 中日本の「やまなしドライブプラン」で料金を比較してみよう。このプランは、東京・神奈川・名古屋発着があり、それぞれ富士山周遊エリア・山梨県域周遊エリアの2種類を選べる。連続する最大2日間使うことができるので、今回は、まず1日目に東京から山梨・河口湖まで行くとしよう。
普通車で発着エリアの調布ICから富士山周遊エリアの河口湖ICまで向かうと、通常のETC利用料金は片道2550円。東京発の「やまなしドライブプラン(富士山周遊エリア)」は2日間有効で4100円なので、往復するだけでも、このプランを利用したほうが安いことになる。
ただし、休日になると事情が変わる。ETC休日割引が適用になり、河口湖まで片道1960円(往復3920円)になるため、往復だけでは元が取れないのだ。次の日、河口湖から勝沼に行き、ワイナリーを見学して国産ワインを買い(くれぐれも試飲してはいけない!)、そのまま調布ICに戻ると、2日間の合計高速料金は4730円になるので、周遊プランのほうが安くあげられる(以上はNEXCO中日本の料金・ルート検索による比較)。
このETC休日割引はなかなか優秀なため、単なる往復では元が取れない場合がある。旅程が決まったら、一度シミュレーションをしたほうがいいだろう。ただし、各社の周遊プランは8月10~16日は利用できない設定が多い。それ以外の夏休み時期の平日利用が、最も割引の恩恵にあずかれるだろう。
北海道や九州、伊勢や四国など、各社で周遊エリアもさまざまなので、旅行の予定があるなら、ぜひ検討してはどうだろうか。プランを利用するには、各社のホームページで事前に会員登録や利用申込みが必要だ。また、指定されているエリア外から乗り降りするとプラン対象外になるなどの注意点もあるので、しっかり確認しておきたい。
意外に盲点!JRの各種割引で半額も
次は鉄道だ。JRを使って出かける先が片道601キロ以上あれば、往復割引が利用できる。往復で買うことで乗車券代が1割引になるのだ。
例えば、東京~岡山間は片道732.9キロで通常の運賃は1万480円。片道ずつ買うと2万960円となる。しかし、往復割引を利用すると片道9430円×2で、往復では1万8860円となり、2100円も安くなる計算だ。
601キロに届かないという場合は、あえて先の駅まで買うという技もある。例えば東京~新神戸間は約590キロなので、601キロを超える先の駅まで買うと、割引がきいて逆に安くなるという現象が起きる。微妙な距離の時は、みどりの窓口で聞いてしまうのが手っ取り早い。
また、新幹線からJRの特急・急行列車などに乗り継ぐ場合に利用できる割引もある。出発前に乗車券および乗り継ぐ列車双方の特急券などを、みどりの窓口などで同時に買うと、特急・急行料金、指定席料金が半額になる「乗継割引」だ。
東京から和歌山・白浜に行くと想定し、新大阪まで新幹線で行き、そこから在来線「くろしお」に乗り継ぐと、「くろしお」の特急料金が半額になる。この特急料金は時期によって異なるが、通常2000円以上するので半額になるのは大きいだろう。
乗継割引が適用されるのはJR間の乗り継ぎであり、他社の特急・急行には適用されない。また、九州新幹線には、この割引制度はないので注意を。
JR東日本の会員サービス「えきねっと」限定の割引切符「えきねっとトクだ値」は、お盆などの繁忙期でも利用できる。設定列車や座席に制限があるので、お盆期間は競争率が高いと思われるが、最大6人まで申し込め、指定席特急券+乗車券が10~15%引きになる。東北・山形・秋田・北海道新幹線、上越・北陸新幹線などが対象になるので、そちらの方面に帰省や旅行を予定しているなら、とりあえず会員登録から始めよう。
とはいえ、人と同じ時期に動く以上、旅行費の節約は難しい。「この時期はお金がかかる」と観念し、9月以降に出費の引き締めや節約に励むとしよう。
(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)
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