総資産が35億円もあるにもかかわらず、クレジットカードの入会審査で落とされたというツイートが話題を呼んでいる。投稿主は、投資で多額の資産形成に成功して「FIRE」を実現したため現在は無職の40代男性。「三井住友カード プラチナプリファード」へ入会しようしたところ、審査で落ちてしまったという。定職には就いていないものの「もう働く必要がない」ほどの資産を持つにもかかわらず、なぜ落とされたのか。また、意外な理由でカード審査に落ちることは、よくあるものなのか。専門家に聞いた。
投稿主の男性は会社員時代にスタートアップ投資やインデックス投資などで潤沢な資産を形成し、会社を退職。現在は投資家として活動しているが、8月、X(旧Twitter)上に
<超富裕層だろうが、無職だとカード審査落ちるよ。実際に資産35億円ニートのわいは三井住友VISAカードの審査落ちたから>
という文面とともに、三井住友カードから送られてきた「【三井住友カードプラチナプリファード】ご入会審査結果のお知らせ」と題する通知の文面を投稿。そこには「誠に恐縮ながら今回はご入会をお見送りさせていただくことになりました」と綴られている。
継続的な収入の有無が重要視
カード会社各社が発行するカードは一般的に、上位のステータスから順にブラックカード、プラチナカード、ゴールドカード、一般カードに分類され、今回話題となっている三井住友カードプラチナプリファード(以下、プラチナプリファード)はプラチナカードに該当する。プラチナプリファードの大きな特徴は、ポイント還元率特化型であるという点。三井住友カードの一般カード、ゴールドカードの還元率が0.5%であるのに対し、プラチナプリファードは1%。さらに、プリファードストア(特約店)では最大プラス9%となる。ちなみにプリファードストアには、一休.com、セブン-イレブン、ローソン、マクドナルド、サイゼリヤ、バーミヤン(以上すべて+6%)など、身近なサービス、店舗もそろっており、普段からこれらを利用する人にとっては恩恵は大きい。
また、年間100万円の利用ごとに1万ポイント(最大4万ポイント)がつき、家族を登録すれば対象のコンビニエンスストア・飲食店で最大+5%が還元される「家族ポイント」もある。
そして、SBI証券の投資信託をプラチナプリファードで積み立てると積立額(上限毎月5万円)の5.0%のVポイントが貯まる点も大きな特徴。積立額を上限いっぱいに設定すれば、還元されるVポイントだけで、ほぼカード年会費(3万3000円)を賄うことができる。「総利用枠」「カード利用枠(カードショッピング)」はともに500万円。ちなみに、通常のプラチナカードには付帯しているコンシェルジュサービスがない点はデメリットともいえるが、普段からそのようなサービスを利用しない人で、かつSBI証券で積立をやっている人にとっては魅力的なカードといえるだろう。
プラチナプリファードの特徴について、消費生活ジャーナリストの岩田昭男氏はいう。
「従来、プラチナカードは富裕層を想定利用者としており、コンビニエンスストアや外食チェーンなどで利用すると高いポイントを稼げるというような類のものではなかった。その意味では、これまでにはあまりないタイプのプラチナカードといえる。もともとゴールドカードより上位のカードを持つ人たちの動機の一つとして『ステータスの証し』という面が大きかったが、時代の流れとともにポイント還元も重視されるようなり、プラチナカードにもそういう波が押し寄せてきているということ」
前述の繰り返しになるが、男性は定職に就いておらず会社員のように継続的な収入はないものの、一生生活するには困らないほどの資産を持っているが、なぜ、それでも審査で落とされたのか。三井住友カードは「三井住友カード プラチナプリファード独自の審査基準により発行させていただきます」としており、その具体的な理由はわからないが、岩田氏はいう。
「一般的にカード入会審査では入会申込者のストックよりフローが重視され、継続的な安定収入があるかどうかが重要な要素になるため、その基準を満たせなかったのかもしれない。また、このプラチナプリファードは保有者がコンビニや外食チェーン、小売チェーンなどで『普段使い』することを想定しており、もっといえば、カード会社としては保有者に『普段使い』してくれないと意味がない。働く必要がないほど多額の資産を持つ人が果たして頻繁にそういう店を利用するのかと、カード会社側が疑問を感じ、このカードの想定利用者像とのミスマッチが生じたことが、審査が通らなかった原因である可能性もある。要は『ウチなんかに来ないで、もっと上位のアメックスやANAカードのプラチナカードに行ってくださいよ』ということなのかもしれない」
カード入会の審査で落とされる理由として、他にどのようなものがあるのか。
「別のカードでの返済延滞履歴や、単に高齢を理由に落とされることはある。また、お金持ちのなかには『自分でカードを持ったことがない』という人もおり、そういう人も『利用履歴がない』という理由で落とされることもあるようだ」
(文=Business Journal編集部、協力=岩田昭男/消費生活ジャーナリスト)