不動産情報の東京カンテイが2024年1月31日、「マンション化率」に関する調査をリリースしました。これは、全世帯のうちマンション住まいの世帯が何%かというデータであり、都道府県単位、市区町村別単位でのマンション化率がまとめられています。
全国のマンションストックは761万戸
不動産専門のデータバンクである東京カンテイによると、2023年末現在でのわが国の分譲マンションストックは約761万戸で、都道府県別では東京都が約201万戸と最も多く、次いで神奈川県が約101万戸、大阪府約87万戸、兵庫県約48万戸、埼玉県約47万戸などとなっています。国土交通省の調査によると、分譲マンションのストックは2022年末現在で約694万戸です。データの年次が1年違うものの、両者を比較するとマンションの9割強は分譲マンションということになります。
分譲マンションのストック数約761万戸に対して、わが国の世帯数は約5849万世帯ですから、全世帯のうち何%がマンションに住んでいるかという数値を意味する「マンション化率」は13.01%になります。全国の全世帯のうちおよそ7.7世帯に1世帯が分譲マンションに住んでいる計算です。
東京都のマンション化率が全国トップ
東京カンテイでは、そのマンション化率を、毎年都道府県単位、市区町村単位で調査、結果を公表しています。図表1にあるのが、2023年の都道府県単位のマンション化率のランキングです。全国平均のマンション化率は13.01%で、22年から0.11ポイント高くなりました。ジワジワとではありますが、マンション住まいの人たちが着実に増えていることを感じさせる数字ではないでしょうか。
都道府県単位でみると、最もマンション化率が高いのは当然のごとく東京都で、図表1にあるように23年は28.21%でした。前年より0.21ポイント高まっており、東京都ではマンションの居住者が全国平均より大きく増えているようです。
東京都に次いでマンション化率が高かったのは、神奈川県の22.23%で、次いで大阪府が20.29%、兵庫県が19.16%などとなっています。5位には三大都市圏ではない福岡県が16.18%で入っています。
中部圏のマンション化率は10%を切っている
やはり大都市圏のマンション化率が高く、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の首都圏全体では22.23%で、前年より0.11%高くなりました。滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県の近畿圏は16.87%で、こちらは0.14%の増加でした。前年に比べての増加率では、近畿圏のほうが首都圏より高くなっています。さらに、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県の中部圏は8.35%で、前年比0.10%の増加でした。三大都市圏のなかでも、中部圏は比較的マンション化率が低くなっています。どちらかといえば昔からマンションよりは戸建住宅志向の強いエリアで、マンション化率は10%を切っています。
その中部圏より高いのがいわゆる地方四市のある県です。札幌市のある北海道は中部圏よりやや低いのですが、それでも8.04%で、中部圏に肉薄しています。仙台市のある宮城県は9.64%で、広島市のある広島県は10.75%と中部圏より高く、福岡市のある福岡県は16.18%となっていて、中部圏より高いだけではなく、近畿圏に迫る勢いです。
先の図表1を見ると、都道府県別のマンション化率のランキングでは、福岡県が5位に入っていて、7位に広島県、8位に宮城県、10位に北海道が入っていて、地方四市を中心に、地方でのマンション化率が高まっていることを示しています。
青森県のマンション化率は0.96%
反対に、マンション化率が全国で最も低いのは青森県の0.96%です。1%を切っているのは、青森県だけで、マンション住まいは100世帯に1世帯もないことを意味しています。そのほか、秋田県が1.49%で、山形県が1.73%、福井県が1.92%、岩手県が2.72%などとなっています。マンション化率が低い県としては、東北地方の各県が並んでいるようです。東北地方のように寒冷で雪の多い地域であれば、戸建住宅よりマンションのほうが快適に住めるのではないかと思うのは著者だけでしょうか。
そこで、前年からの増加率をみると、青森県、秋田県、岩手県、山形県は0.02%の増加で、わずかとはいえ、マンションに住む人が増えていることを意味しています。全国的にみると、山梨県は0.02%のマイナスで、静岡県、奈良県はマイナス0.01%となっています。それに比べると東北各県ではほんとうにジワジワとですが、マンション化が進行しているといってもいいのかもしれません。
東京の都心では8割以上がマンション住まい
東京カンテイでは、都道府県別とは別に行政区別のマンション化率も調査し、上位の市区町村のランキングを公表しており、そのベスト10が図表2にある通りです。マンション化率が最も高かったのは東京都中央区の83.28%でした。中央区といえば、わが国を代表する日本橋、八重洲、銀座などのビジネス街、ショッピング街がありますが、再開発によって利便性の高いエリアでのマンションが急増しており、マンション化率が高まっています。
特に、湾岸部での超高層マンション街の開発が活発で、晴海では、東京オリンピックで選手村として活用された「晴海フラッグ」が開発され、5000戸以上の分譲マンションが供給されましたし、そのほかには総戸数1000戸前後の大規模マンションが少なくありません。そのため、東京都中央区のマンション化率は、前年と比較すると4.46%も高まっています。これは、マンション化率の高い市区町村のなかでも出色の増加率です。
大阪市の中心部でのマンション化率が急上昇
東京都中央区に次ぐが、東京都千代田区の80.96%で、マンション化率が80%を上回った市区町村はこの2区だけでした。千代田区といえば、大手町、丸の内、有楽町などのビジネス街が代表格で、霞が関、永田町などの官庁街もあり、マンションとは縁遠い世界のように感じますが、最近はビジネス街やショッピング街の再開発において、職住近接型のマンションが設けられることが少なくなく、人気を博しています。また、超富裕層向けのラグジュアリーマンションも続々と誕生するようになっています。それが、高いマンション化率につながっているのでしょう。3位の東京都港区は76.96%、4位の大阪府大阪市中央区は73.80%で、70%台はこの2区だけで、5位以下は60%台以下となっています。
そのなかで注目しておきたいのが、大阪市の中心部の各区。4位に入った中央区は、本町、淀屋橋などのビジネス街が中心ですが、駅周辺での再開発によって駅直結型の利便性の高い超高層マンションが次々に建設されています。同様に北区はJRの大阪駅、阪急・阪神電鉄などの梅田駅、大阪メトロ各線の梅田駅、東梅田駅、西梅田駅などがある大阪の玄関口ですが、梅田駅を中心に大規模な再開発が進行していて、超高層マンションが林立するようになっています。西区も同様で、大阪メトロの四つ橋線、中央線、千日前線、長堀鶴見線の各線のほか、阪神電鉄の阪神なんば線も走っていて、交通アクセスが充実、各駅の近くでマンションの開発が相次いでいます。
マンション化率が低下したエリアもある
そんななかではありますが、マンション化率が高いエリアでも、前年と比べれば数値が低下している市区町村もあります。ランキングの上位に挙がった行政区では、東京都千代田区が-0.06%、東京都港区が-0.15%、横浜市西区が-0.32%などとなっています。これらのエリアではマンションも増えているものの、それ以上に戸建住宅に住む人が増えたということでしょう。その結果、マンション化率がわずかとはいえ低下しています。
エリアによってマンション化率は異なり、また増減に違いがあるので、今後のマンションの販売、竣工動向などを見る上では、このマンション化率のデータをみておくのが有効かもしれません。ある程度の情報は一般にも公開されているので、場所選びの参考にご覧になってはいかがでしょうか。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)
※東京カンテイ
2023年のマンション化率13.01%に拡大 ストック戸数は前年から98,945戸の増加 (kantei.ne.jp)