「株は5月に売れ」は本当?経済・投資のよく当たる経験則 保有資産を見直す3つの基準
株式投資にはアノマリーがあります。アノマリーとは、理論的な根拠があるわけではないが、よく当たる経験則のようなものです。
有名なアノマリーとしては、「5月に売って10月に買え」「節分天井、彼岸底」「米国株は中間選挙の年を底に、大統領選挙まで上がる」などがあります。
その中でも最も有名なのが「株は5月に売れ」であり、英語では「Sell in May and go away. But remember come back in September」(株は5月に売ってバカンスでも行って株のことを忘れろ。ただその年の9月には帰ってくることを忘れるな)になります。
1896年からのニューヨーク・ダウ(米・ニューヨーク平均株価)を調べた結果、11~翌4月の冬の季節のリターンが平均5.4%、一方5〜9月のリターンが2%と、このアノマリーの有意性が見て取れます。
では、なぜこのような差が生まれるのでしょうか?
最も大きい要因としては、季節の変化が考えられます。つまり北半球では9〜10月というのは、これからまさに冬に入っていくところであり、人の心境としてはどんよりと灰色に曇った空の下で厳冬に対する不安を感じると思います。特に金融の中心地であるアメリカのニューヨークやボストンなどは、10月から雪が降り始め、1月ごろにはマイナス10度を下回るほど寒くなります。
そして、4月中旬にようやく雪も解け始め、5月には厳冬を乗り越えた新緑の青さが目に眩しく、9月初めまで湿気のないさわやかな夏を楽しむことができます。
この季節サイクルの中で、これまで1929年に発生した世界大恐慌の発端となった「暗黒の木曜日」や1987年の世界的株価大暴落の引き金となった「ブラックマンデー」が10月、2008年のリーマンショック破綻が9月に起こっているのは単なる偶然ではありません。夕焼けを見れば少し不安になり、朝日が昇るのを見れば活力が湧いてくるのと同じく、これから迫る冬に対しての不安を感じる人が多い中で、一つのきっかけが雪崩を打ったような暴落につながっていると思います。
●5月と9月にリバランスを
それでは5月に全部売って、9月に買い戻せばいいのかというと、それを始めるとタイミングを取って売買をするようになってしまうので、筆者のお勧めは、リバランスを5月と9月にきっちりとすることです。
リバランスとは、仮に運用資産の株式と債券の資産配分が50%:50%だったとします。それが、5月時点で株価の値上がりによって株式60%:債券40%となった場合は、株式を10%売って債券を買い増しすることです。
この資産配分のリバランス以外に、今持っている株式型投資信託を継続保有すべきか、より良い投資信託に変えたほうがいいのかの基準をいくつか列挙したいと思います。
(1)運用担当者が変更になった場合
それまで良い成績を出していた投資信託が運用担当者の異動や転職によって、運用成績が急に悪化したりすることがあります。特に一人のカリスマ運用担当者が運用をしていた場合は、担当変更は1つの売りのタイミングです。
(2)純資産額が大きくなりすぎた場合
株式を主に組み入れる株式投資信託の場合、運用金額が大きくなりすぎると小回りが利かなくなり、運用成績が悪化することがよくあります。その規模としては中小型株で運用する投資信託で1000億円、大型株で2000億円を1つの目安としてください
(3)長期間に渡りベンチマークを下回っている場合
運用担当者が銘柄や投資割合を決定するアクティブファンドの場合は、手数料がインデックスファンドより高い代わりに、インデックス(ベンチマーク)を上回る成績を出す必要があります。例えば、日本株で運用する投資信託が日経平均より成績が悪かった場合は、日経平均を買っているほうがコストも安くていいわけです。よって皆さんが持っているアクティブファンドを「モーニングスター」などの金融情報サイトで調べ、3年以上続けて運用成績がベンチマークより下回っている場合は売りのタイミングかもしれません。