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今、分譲マンションで進行する悲惨な事態…住民が高齢化→修繕できずスラム化

文=渡辺雅史/ライター、協力=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
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「gettyimages」より

 SNSやネット掲示板で以前からたびたび盛り上がる、戸建とマンション、持ち家と賃貸、どっちがいいか論争。この争いで、バブル時代に建てられた分譲マンションの現状を伝えたX(旧Twitter)の投稿が話題となっている。内容を要約するとこんな感じだ。

・個人的には分譲マンションだけはやめたほうがいい
・親の住む家が昭和の時代に購入した数千万円の高級分譲マンション
・築40年以上たち、住民が高齢化し限界住宅に
・住民投票でマンションタイプの光回線の導入が否決された
・修繕費が上がり続け、売却価格も下落

 バブル期前後に一気に増えた分譲マンション。まもなく入居開始となる、東京オリンピックの選手村跡地に建設されるマンション「晴海フラッグ」のタワー棟は、購入申し込み抽選の平均倍率が15倍にもなるなど、現在も分譲マンションは人気だ。そんな分譲マンションが老朽化すると、上記のような事態に陥るのか。そして、分譲マンション購入の際の注意すべきリスクはなにか。オラガ総研代表で不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏に聞いた。

「ネットで話題となっていた、戸建orマンション、持ち家or賃貸の論争でいうと、持ち家のマンションにあたる分譲マンションはリスクが大きい物件だと私は考えています。分譲マンションは一棟の建物を区分所有するというスタイルの物件。ちょっとした修繕を行う場合でも自分で自由に決定できる専有部分と大規模修繕や建替え、マンション全体での生活上のルール決めなどについて住民全員で決定しなければならない共有部分が絡み合っているところが長く住んでいく場合にはリスクといえるでしょう」

 共有部分というと、建物の外壁やエレベーター、駐車場などをイメージするが。

「極端なことをいえば、自分の家の扉だけピンクにしたいと思っても、扉は共用部に相当するので、管理組合の総会を開いて住民全員で決議をとらなければならない。部屋の内装を変えるのは自由だけど、床、壁、天井といった、マンション全体の構造に関わる部分をいじるのはNG。じゅうたんの部屋をフローリングにする場合も、下や隣の部屋への音の問題があるので、多くの管理組合は規約で『ある程度遮音性能等級の高いものでないとダメ』みたいなルールがあります。自分の部屋の中だから自由に変えようと思っても、実は管理組合にお伺いを立てる箇所が意外とあります」

クルマ1台分の値段でしか売れない

 話題となったのは昭和から平成の初期にかけて建設、販売されたもの。この投稿のように限界住宅のような状況になり売却価格が暴落することはあり得るのか。

「郊外で分譲マンションが老朽化し、住民が高齢化して限界住宅の様相を示しているところは普通にあります。千葉、埼玉の衛星都市のさらに郊外。30〜40年前に3000〜4000万円で販売されていたのに現在ではクルマ1台分の値段でしか売れないという分譲マンションなんてザラです」

 なぜこのようなことが起こるのか。

「修繕するにしろ建て替えるにしろ、住民全員と話し合わなければならないというところがネックとなっています。購入当初はみんなほぼ同じ経済状態の方たちばかりです。同じような価値観の人たちが住む場合は、共有部分の改修などについての話し合いもスムーズに行きます。ですが時間が経つと、所有者の中には失業したり経済状況が悪くなる人がでてくる。そうなると管理費や修繕積立金を滞納する人が出てくる。その結果、修繕を実施する時に積み立てていたお金が足りないという問題が出てくる」

 問題解決のためには修繕積立金の値上げが必要となるが。

「管理組合の総会で値上げに関する決議を取ると、年金暮らしの住民が払えないとか、現在抱えているローン返済でぎりぎりの生活なのでこれ以上の値上げは厳しいといった反対意見が出て、値上げできない。修繕積立金や管理費が不足すれば、マンション管理会社が管理組合との契約を解除。マンションを自主管理しなければならなくなるケースがあります」

 外装工事を業者に依頼したり、水道や電気のメンテナンスの業者との交渉はマンションの住民にとっては大きな手間。本来は管理会社に行ってもらうのが賢明だ。

「でも管理会社の間で悪い噂が立っていると契約を断られる。そして管理不全が起こってスラム化が起こります」

 全員と話し合わなければならないという分譲マンションの仕組み。住民の置かれている立場が似ている場合はコトがスムーズに進むが、購入から数十年の時を経ると各家庭の事情の変化で話し合いが難航するのだ。

限界住宅になる物件をつかまないためのコツ

 とはいえ、東京をはじめとする大都市で一軒家を購入するのはハードルが高い。持ち家を手にするなら分譲マンションが現実的だ。数十年後に限界住宅になってしまう物件をつかまないためのコツはあるのか。

「立地の良いマンションを買ってください。たとえば青山、麻布、赤坂など、いい場所にあるマンションは古くなっても確実に売れる。立地のいい物件は古くなっても人がどんどん入れ替わるからです。入れ替われば若い人が入ってくる。そうすると管理費や修繕積立金を支払うことに支障はありませんので管理は安泰です。とはいえ青山、赤坂のマンションを買える方は限られます。そこで私がお勧めするのは主要幹線の急行や快速が停まる鉄道駅から徒歩7分以内の物件です。この条件のマンションなら、物件の流通性を確保できます」

 冒頭部で触れた「晴海フラッグ」はどうだろうか。

「住んでみたら良い場所なのかもしれませんが、投機目的で購入している方が多そうなのが気になります。投機目的の人のなかには『来年売るので今は修繕しないでいい』という人も出てくるので、建物の修繕に消極的。だから話し合いが進まない。特にタワーマンションの修繕費は一般的なマンションより数倍高い。大規模修繕にあたっては所有者が一致団結して対処しなければなりません。昨今の建設費の値上がりは当然、修繕費の値上がりに直結し、現在の積み立て計画では足りなくなるおそれもあります。話題となった限界住宅のようなマンションよりも早い段階でいろいろな問題が噴出することが予想されます」

 分譲マンション問題は今後、大きな社会問題となる可能性を秘めている。

(文=渡辺雅史/ライター、協力=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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