今年1~6月の東京都23区の新築マンション平均価格が1億円を突破し、過去最高の1億2962万円となったことが不動産経済研究所の調査によりわかった。同研究所の調査によれば、昨年同期から4000万円以上の上昇、1.6倍にもなっている。また、中古マンション価格も今年に入り都心6区(千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷)では平均1億円以上となる月も多いといい(19日付日本経済新聞記事より)、新築・中古ともに高騰が続いている。なぜマンションの値上がりは続いているのか、誰が買っているのか、そして、新築マンション建設が続くなかで供給量が増えるなかで、値上がりはいつ頃にピークをむかえるのか――。専門家の意見を交え追ってみたい。
不動産経済研究所が7月20日に公表した「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2023年上半期(1~6月)」によれば、首都圏の1~6月の新築マンションの平均価格は8873万円で、前年同期比で2363 万円(36.3%)の上昇。なかでも東京23区は1 億2962万円で、1平方メートルあたりの単価は192.4万円となっている。注目すべきは初月契約率の高さだ。東京23区は75.3%、前年同期比3.1ポイントの上昇で、価格が上昇しても消費者の購入意欲が衰えていない様子がうかがえる。
供給数も衰えがみえない。同研究所のレポートによれば、23年の首都圏の年間供給は約3.0万戸で、これは前年比1.5%増という数字だが、これほど高い水準で供給が続けば、需要と供給のバランスでいつかは価格上昇はピークを迎え、下落トレンドに入るというのが通常の価格変動である。そしてマンション購入を考えている人々にとってもっとも興味があるのが、「いつから下がり始めるのか」という点だろう。
23年下期も前年同期比で1割以上のアップ
価格上昇の要因について、住宅ジャーナリストの山下和之氏はいう。
「不動産経済研究所によると、23年上半期の新築マンションの首都圏の平均価格は8873万円で、前年同期比36.3%のアップ。23区だけに限ると1億2962万円で60.2%のアップだった。中古マンションも東日本不動産流通機構によると、首都圏の中古マンションの成約価格は23年8月で4704万円で、前年同月比9.9%上がっている。首都圏の中古マンション成約価格の前年同月比の上昇は20年6月以来、実に39カ月連続。しかも、二桁に近い高い上昇率となっている。新築が高くなりすぎているので、中古の割安感が注目されているが、このまま上がり続ければ、その割安感もメリットが小さくなりそうだ。
新築については、23年上期には『三田ガーデンヒルズ』『ワールドタワーレジデンス』の平均2億円、3億円の超高額物件が売れた。それもほとんど完売に近い状態で、契約率が高く、順調に売れている。『三田ガーデンヒルズ』は25年の竣工予定だが、幹事会社の三井不動産レジデンシャルは、竣工前の24年中には完売できるのではないかという強気の見通しを打ち出している。ちなみに、『三田ガーデンヒルズ』の坪単価は1200万円~1700万円で、376平方メートルのペントハウスは45億円だという。
23年下期もこの両マンションの販売が続き、今後もやはり2億円台、3億円台の住戸が中心の三菱地所レジデンスの『ザ・パークハウス代々木大山公園』などの超高額物件が続く。そのため、当分、新築マンションの平均価格は上がり続ける。23年下期も前年同期比で1割以上のアップは間違いなく、24年まで上昇が続くのかが注目の的」
24年あたりには限界に近づくか
いったい、どのような層の人たちが買っているのか。
「ここまで高くなると、需要が追いつかないという見方がある一方、実需ながら資産価値上昇を期待して、かなり無理して購入する高額所得者が増えている。高額のローンを組んでも返済できる高額取得者やパワーカップルで、いま買っておけば値上がりによって資産家の仲間入りできるという期待がある。個人的には非常に怖い考え方だと思うので、あまり無理はしてほしくはない。
そのほか、スタートアップの成功者などの新たな富裕層も多く、地方の資産家が東京の迎賓館、子弟の下宿などとして購入するケースも安定的にある。さらに、円安を背景に海外からの購入も多い。超高額物件でも1割から2割は海外からの購入者で、上海、台北などに比べると日本のマンションは安いという判断で、原則的に現金買いしている。海外からみると、もう少し上がっても、東京や大阪のマンションの魅力は褪せないだろう」
では、マンション価格の上昇はいつまで続くのか。
「庶民感覚では現在の高さにはとてもついていけないが、ついていける層が一定数いるのは間違いない。そのため、23年下期も1割程度は上がるが、24年あたりにはそろそろ限界に近づくのではないだろうか。とはいえ、急速な下落は考えにくく、ピークは打つものの、しばらくは横ばい程度で推移することになりそうな気がする」
(文=Business Journal編集部、協力=山下和之/住宅ジャーナリスト)