リクルート住まいカンパニーが運営するニュースサイト「SUUMOジャーナル(スーモジャーナル)」が発表した「『東京駅』まで60分以内、中古マンション価格相場が安い駅ランキング 2020年版」によると、1位は東武野田線の七里駅、2位はJR高崎線の桶川駅、3位は同じく高崎線の北本駅となった。テレワークが進む中で埼玉県と千葉県の人気が表れた同ランキングについて、「SUUMO」副編集長の笠松美香氏に話を聞いた。
1位の七里駅は1050万円
――ランキングの結果から教えてください。
笠松美香氏(以下、笠松) 以下の通りです。今回、対象としたのは駅徒歩15分以内にあるファミリータイプの中古マンションです(駅/価格相場/沿線/所在地/東京駅までの所要時間/乗り換え回数)。
1位/七里/1050万円/東武野田線/埼玉県さいたま市見沼区/51分/1回
2位/桶川/1385万円/JR高崎線/埼玉県桶川市/50分/0回
3位/北本/1400万円/JR高崎線/埼玉県北本市/55分/0回
4位/白井/1515万円/北総線/千葉県白井市/50分/2回
5位/元山/1535万円/新京成線/千葉県松戸市/47分/1回
5位/天王台/1535万円/JR常磐線/千葉県我孫子市/43分/0回
7位/三郷/1580万円/JR武蔵野線/埼玉県三郷市/45分/2回
7位/流山/1580万円/流鉄流山線/千葉県流山市/56分/2回
9位/北柏/1590万円/JR常磐線/千葉県柏市/44分/1回
10位/村上/1730万円/東葉高速鉄道/千葉県八千代市/53分/1回
埼玉県と千葉県の駅で占められる結果となりました。
――どちらも東京のベッドタウンとしての性質を持っている地域ですが、利便性の違いなどはあるのでしょうか。
笠松 今、埼玉県は人口流入が増えています。西武線、東武東上線、JR各線が都心に向かっているため、都心に通勤する人にとっては非常に利便性が高いです。また、分譲価格も都内より圧倒的に安いので、今後も人口増加傾向は続くのではないでしょうか。一方、千葉県は東京の東に位置している関係上、都内の東側への利便性は高いですが、西側へのアクセスは悪いです。そのため、渋谷駅や新宿駅を基点とする調査では分が悪いのですが、埼玉県は東京駅に加えて新宿駅や渋谷駅への利便性も高く、人気の要因となっています。
――1位の七里駅は2位以下を大きく引き離す安さですね。
笠松 埼玉県さいたま市に位置する七里駅から東京駅へは、東武野田線で4駅・約10分の大宮駅に行き、JR上野東京ライン直通の高崎線またはJR東北本線に乗り換えると約50分で到着します。この経路の列車は7~8時台に加え9時台にも何本も走っており、時差通勤にも対応できそうです。
現在、七里駅は駅舎の改修が進行中です。2023年度中の完成を目指して、橋上駅舎化と、駅北側からのアクセスが向上する南北自由通路の整備が行われています。また、駅北側の再開発も進められており、将来的には北口駅前広場ができるほか、公園や幹線道路の整備も計画されているため、非常にポテンシャルの高い地域といえます。
――七里駅もそうですが、「東京駅まで60分以内」というアクセスの良さは意外な気もします。
笠松 この10年ほどで各線の乗り入れが進むとともに、ダイヤ改正で東京駅への到達時間が早くなりました。今回のランキングでは、乗り換えなしで行けるのは、高崎線の桶川駅と北本駅、常磐線の天王台駅です。2015年に開通した上野東京ラインは、東京駅と上野駅を経由した後、高崎線、宇都宮線、常磐線の各駅に分岐するため、埼玉県、栃木県、千葉県と都心部がダイレクトにアクセス可能となり、利便性が高まりました。
――埼玉県を上回る6駅がランクインした千葉県では、1515万円の白井駅がトップとなりました。
笠松 白井駅からは京成本線(特急)直通の北総鉄道(特急)に乗り、青砥駅で京成本線(通勤特急)に乗り換えて日暮里駅へ、そこから上野東京ライン直通の常磐線に乗ると、乗り換え2回で50分ほどで東京駅に到着します。所要時間が10分ほど増えますが、乗り換え1回の経路もあります。この北総線やつくばエクスプレスの各駅は、都内に出やすく、後発路線のため分譲価格が比較的安いです。いわゆる東葛エリアが10年ほどで一気に利便性が高まったように、後発路線の沿線や知名度が低い駅は穴場といえると思います。
(構成=長井雄一朗/ライター)