大東建託は、過去最大級の沿線ランキング「いい部屋ネット 街の住みここち沿線ランキング2019<首都圏版><関西版>」を発表した。これは、首都圏・関西の253沿線居住の12万5392名を対象に、居住満足度調査としては過去にない大規模な本格調査を実施、集計したものだ。本当に住みやすい沿線や街はどこか。また、それらに共通するポイントは何か。大東建託賃貸未来研究所所長・AI-DXラボの宗健氏に話を聞いた。
タワマンの多さが住みやすさに直結?
――首都圏版の調査結果についてうかがいます。まず、ランキング上位の沿線について教えてください。
宗健氏(以下、宗) トップ5は以下の通りです。
1.みなとみらい線(横浜~元町・中華街)
2.東急目黒線(目黒~多摩川)
3.東急東横線(渋谷~多摩川)
4.京王井の頭線(渋谷~吉祥寺)
5.JR中央線(中野~武蔵境)
ランキング上位には、都心や横浜へのアクセスが良く、人気が高い東横線、井の頭線、中央線、東急田園都市線のほか、目黒線、東急世田谷線、横浜市営地下鉄ブルーラインの沿線も入っています。また、鉄道会社別にみると、いわゆる城南地区の東急5沿線がトップ10内にランクインしています。
――みなとみらい線が1位になった理由はなんでしょうか。
宗 「住みたい街」としてよく挙げられる横浜のイメージと合致する結果となりました。また、タワーマンションが多いことも要因のひとつでしょう。住みここち調査のデータを分析すると、タワマンに住んでいる人は、生活の満足度や幸福度が高いことがわかっています。みなとみらい沿線はタワマンが多いので住みここちが良いという、シンプルな理由です。
――トップ5の沿線に共通している要素などはありますか。
宗 いずれの沿線でも居住者の所得が高い地域が含まれており、住んでいる人の属性が、ある程度均質であることが挙げられます。街の住みここちについては、タワマンやスーパーの有無などハードの問題よりも、住む人の属性の問題のほうが大きいと考えています。これは、首都圏だけではなく関西も同様です。
政治的・社会的には、さまざまな階層の人たちが混ざり合って居住するソーシャル・ミックスが正しいのですが、実際には均質化する傾向にあります。アメリカも表向きはソーシャル・ミックスをうたいつつも、実際には階層と人種などによって居住地が異なる傾向があります。
――都心部についてはいかがでしょうか。
宗 今回の調査からは除外していますが、JR山手線の内側と千代田区・中央区・港区の都心3区の評価は非常に高くなっています。ただし、このエリアは駅が密集しており、全国的に見ても特殊なエリアと言えます。
――住みここちの良い沿線や街に共通していることはなんでしょうか。
宗 人口増加率が高いことが挙げられます。前提として、「人気がある」と「住みここちが良い」は違うと考えています。そして、「住みたい街」に人が集まるのではなく、認知度が低くても「住みここちが良い街」には人が集まってきます。
たとえば、今回の調査では、ターミナル駅周辺の街の評価が高くはなく、ターミナル駅から少し離れた街の評価が高いことがわかりました。家賃相場や実際の住環境などを考慮した結果、「住みたい街」と「実際に住みやすい街」が違ってくるということでしょう。
――そのほかに、今回の調査で明らかになったポイントは。
宗 地方では、イオンモールなどの大型ショッピングセンターがある街は住みここちの評価が高まる傾向にあることがわかりました。イオンモールなどの大型ショッピングセンターに対しては、巨大資本で街の商店街を潰して多様性のある街づくりを阻害しているという批判もありますが、実際には近隣住民の利便性を高めているということでしょう。
今回の調査では、自分が住んでいる場所の「良いところ」「良くないところ 」「おススメなこと」を挙げてもらっているのですが、「良いところ」の約18万のデータを解析すると、「イオン」が唯一の固有名詞として抽出されています 。
また、居住年数が長いと住みここちが良いと答える人が増える傾向もありますので、やはり「住めば都」ということは言えるのではないでしょうか。
(構成=長井雄一朗/ライター)