大東建託は、居住満足度調査として過去最大級の街ランキング「いい部屋ネット 街の住みここちランキング2019<総評レポート>」を発表した。これは、全国1896の自治体に居住する20歳以上の男女18万4193名を対象に居住満足度を調査したもので、実際に住んでいる人々がその街に対してどのように感じているのかを表している。
住みここちが良い街(駅)や自治体、それらに共通するポイントについて、大東建託賃貸未来研究所所長・AI-DXラボの宗健氏に話を聞いた。
住みここちが良い街の共通点
――首都圏版のランキング上位の街(駅)と自治体について教えてください。
宗健氏(以下、宗) トップ5の街(駅)と自治体は以下の通りです。
1.広尾駅
2.市ヶ谷駅
3.北山田駅
4.南阿佐ヶ谷駅
5.柏の葉キャンパス駅
1.東京都中央区
2.東京都文京区
3.東京都千代田区
4.東京都渋谷区
5.東京都港区
共通点は、住環境と利便性がほど良く両立していることです。新宿や池袋などが上位にランクインしないのは、ターミナル駅で利便性が良い半面、繁華街が近く、閑静な住環境とは言えないためです。
――街(駅)のトップ5は、それぞれどのような理由で人気なのでしょうか。
宗 1位の広尾は良いイメージや高級感があり、恵比寿、渋谷、六本木、青山など都心へのアクセスも良い。また、有栖川公園などの緑地や飲食店も多く、スーパーや商店街も充実していて買い物には困りません。居住者はIT企業の経営者や役員などの新興富裕層が多いイメージです。
2位の市ヶ谷はJRも地下鉄も利用でき、駅周辺は雑多ではなく、神楽坂も近い。広尾と同じく、お金がある人にとっては住みここちの良い条件が揃っています。
3位の北山田は横浜市営地下鉄グリーンラインの駅で、港北ニュータウンの北部に位置します。日吉駅まで10分もかからず、東急東横線と目黒線に乗り換えができるため、都心へのアクセスも良い。特筆すべきは住環境の良さで、車と歩行者が完全分離された遊歩道が整備されており、緑も多いです。住宅街としては非常に完成度が高いエリアといえるでしょう。
4位の南阿佐ヶ谷はパールセンター商店街や南阿佐谷すずらん商店街があり、買い物や飲食の利便性が高いです。場所にもよりますが、JR中央線と東京メトロ丸ノ内線の両方が使え、都心にも吉祥寺にも近い。また、駅の南側には善福寺川があり、公園や緑も多く、落ち着いた街です。
5位の柏の葉キャンパスはつくばエクスプレスの駅で、千葉県柏市に位置します。新しい街で居住者の均一性が高く、タワーマンションが多く建っています。
――街の住みここちと人口増加には相関関係があるのですか。
宗 住みここちの良い街では住宅供給が盛んで、そうした施策が人口の増加を招いていると考えられ、高い相関関係があります。また、住みここちに知名度はあまり関係なく、居住者の口コミで評判になると開発が進み、さらに住みここちが良くなるという流れがあります。
たとえば、柏の葉キャンパスは開発後に入居した住民の評価が高かったことで、結果的に街のブランディングなどにも成功しています。
埼玉県の街がランクインしない理由
――自治体のトップ5についてはいかがでしょうか。
宗 交通の便が良く飲食店なども充実している都心が上位を占めており、もはや説明不要の感があります。ちなみに、6位は都心の一部である東京都目黒区、7位は人気の吉祥寺を抱える東京都武蔵野市、8位は一橋大学がある文教地区の東京都国立市です。
9位の千葉県浦安市は整備された海側の街並みがきれいで、都心とは住民の属性も違います。千葉では浦安市と千葉市の海浜幕張エリアが海側に大規模な住宅街を整備していますが、いずれも評価が高いです。10位の神奈川県横浜市都筑区は港北ニュータウンがあり、グリーンラインが通っています。
一方、埼玉県では、近年は越谷レイクタウンなどの開発が行われていますが、都心へのアクセスが良い大規模ニュータウンがほとんどなく、ランキングにも顔を出してきません。
――浦安市は平成の大合併で隣接する自治体から合併話もあったようです。
宗 浦安市は所得の高い世帯が多く、ディズニーランドもあって税収を確保できるため、わざわざ合併する理由はないでしょうね。マツダの本社がある広島県府中町など、合併しなかった自治体は総じて住みここちの評価が高い傾向にあります。一方で、合併したことで良さが失われてしまい、評価を下げてしまう自治体があるのも事実です。
(構成=長井雄一朗/ライター)