中古車情報メディア『カーセンサー』(企画・制作 株式会社リクルートマーケティングパートナーズ)が2020年12月に発表した「カーセンサー・カー・オブ・ザ・イヤー 2020」にトヨタ自動車「RAV4」が輝いた。2位はスズキ「ジムニー」、3位はマツダ「RX-8」という顔ぶれだ。人気車の魅力や中古車市場の現状について、リクルート自動車総研所長兼カーセンサー編集長の西村泰宏氏に話を聞いた。
コロナ禍で人気が高まったRAV4
――昨年43位だったRAV4(現行型)が一気にトップとなりました。
西村泰宏氏(以下、西村) カーセンサー・カー・オブ・ザ・イヤー 2020のトップ10は以下の通りです。
1.トヨタ「RAV4」(2019年~)
2.スズキ「ジムニー」(2018年~)
3.マツダ「RX-8」(2003~12年)
4.ポルシェ「911」(2011~19年)
5.ダイハツ「コペン」(2002~12年)
6.スバル「WRX」(2014年~)
7.スズキ「ジムニー」(1987~98年)
8.スズキ「ジムニー シエラ」(2018年~)
9.ポルシェ「911」(2004~11年)
10.トヨタ「86」(2012年~)
国内販売が停止されたRAV4は海外専用モデルになっていましたが、19年4月にフルモデルチェンジして約3年ぶりに日本のマーケットに登場したことで、注目度が高まっていました。同年の日本カー・オブ・ザ・イヤーにも選出されています。それから1年以上が経ち、中古車が増えてきたという事情もありますが、新型コロナの影響で新車の生産がストップや遅延したことで、5~6月にはすぐに手に入る中古車としての需要が高まりました。現在、平均価格は337万円前後です。
――昨年トップのジムニー(現行型)は2位になりました。
西村 ジムニーの人気は変わらず、中古車市場でも高い水準を維持しています。現在も新車販売では納車待ちが続いているので、「新車で半年待つのなら、少しでも早く乗りたい」ということで中古車を選択する人が多いようです。今後も、新車の納車期間が劇的に改善されない限り、常に上位にランクインするでしょう。現在の平均価格は239万円前後です。
――3位のRX-8(初代)は根強い人気を誇る名車ですね。
西村 多くの方が買いたがるモデルなので、やはり今回も上位にランクインしました。魅力は変わっていませんが、12年に生産が終了しているので中古車の流通量が減少しており、今後は上位にランクインするのは難しくなっていくでしょう。現在の平均価格は86.3万円前後です。
――911(991型)は高価格ですが、4位に食い込みました。
西村 「いつかはポルシェ」「いつかは911」と言われるように、長きにわたって人々の憧れであり続けるクルマです。現在の平均価格は1491.3万円前後ですが、現行型の「992型」の登場で価格が落ちており、「この値段で買えるんだ」という声も出ています。
――5位のコペン(初代)の人気の理由はなんでしょうか。
西村 単なる移動だけでなく、「楽しさ」という要素も求められるモデルです。子どもが独立した夫婦など年配の方が選ぶケースが多く、人や荷物をたくさん乗せるような状況ではないという意味では、コロナ禍に最適なクルマのひとつでしょう。
――新型コロナの感染拡大により、2020年は個人で移動できるクルマという存在が改めて見直された1年でもありました。
西村 コロナ禍で人々の行動や心理に変化があった影響を受けて、今回はトップ10を大きくカテゴライズすると、SUVとスポーツカーが占めました。SUVは新車を含めた近年のトレンドですが、トップ10にランクインしたのは、街中だけでなくアウトドアでも映えるモデルばかりです。スポーツカーも含めて、オフシーンでの利用がより意識されて選ばれた結果といえるでしょう。
SUVの人気は、今後も加速していくと思います。また、コロナ禍で少人数での移動が推奨されている中、乗車人数が限られ日常使いには不便とされていたスポーツカーも、「走りを楽しむにはいいよね」と改めて評価される流れがあります。
近年、クルマは全般的にコモディティ化したといわれ、コストもネガティブな意味合いで語られることが多くなりました。しかし、コロナ禍により、プライベートな空間で好きなときに移動できるクルマの価値が再評価されています。これは自動車業界全体にとってポジティブな変化であり、今後の消費動向がさらに注目されるところです。
(構成=長井雄一朗/ライター)