中古車情報メディア「カーセンサー」(企画・制作 株式会社リクルートマーケティングパートナーズ)が発表した「カーセンサー中古車購入実態調査2019」によると、中古車市場規模の推計は年間3兆7498億円となり、調査を開始した2015年以降で過去最高を記録した。また、購入台数は261.1万台(18年は261.9万台)で微減となったが、中古車購入単価の平均は143.6万円で前年から12.3万円増加している。
中古車選びのトレンドと今後の中古車業界について、リクルート自動車総研所長兼カーセンサー編集長の西村泰宏氏に話を聞いた。
「中古車は個性的」と認識する若者が増加?
――中古車市場が過去最大の規模となりましたね。
西村泰宏氏(以下、西村) 昨年に引き続き、中古車購入単価の平均が上昇したことが主な要因です。昨年は200万~400万円の価格帯で中古車を購入する層が増えていましたが、今年は150万~400万円以上の中古車を購入する層が増えています。具体的には、30~40代の方々がファミリーカーとして使えるミニバンやSUVを購入するケースが増えました。
その背景には、新車購入層が中古車を購入している事情があります。安全性や環境などへの対応で新車の価格が上昇傾向にあることや、中古車に対する負のイメージが払拭されてきていることが理由です。
クルマに限らず、中古品の購入自体がコストパフォーマンスが良い賢い消費行動と捉えられるようになってきています。また、それ以上に、若い層を中心に中古車に対するポジティブなイメージが強まってきています。
――中古車のポジションが変わってきたということでしょうか。
西村 調査でも、「中古車は不安だ」というイメージを持つ人は15年の37.7%から34.1%と年々減少しています。ほかにも「中古車に手を加えて乗ることは楽しい」(18年35.8%→19年36.5%)、「中古車は個性的なクルマが多い」(18年29.2%→19年30.4%)が前年比で上昇しており、中古車選択における趣味性の高まりが見られます。
――特に「中古車は個性的なクルマが多い」では20 代、30 代の割合が40代を上回っていますね。
西村 それらの若い世代は、バブル崩壊やリーマン・ショック、東日本大震災などを早いうちに経験した影響か、相対評価よりも絶対評価を価値観の軸としていると言われています。たとえば、新車販売時は不人気と呼ばれたクルマでも「人とカブらない個性的な選択肢」として好んで選ぶ若者がいることは、これまでは新車神話が根強かった日本のクルマに対する価値観に多様性をもたらしてくれるでしょう。
――新型コロナウイルスの感染拡大は、中古車販売市場にどう影響していますか。
西村 4月頃の時点では、今はクルマを購入しているときではないという雰囲気がありましたが、ゴールデンウィーク以降は問い合わせが昨年比で約20%増えています。各自動車メーカーは新車を計画的に生産できず、人気が高いクルマはオーダーに応えづらい事情もあります。そこで、現物があり、すぐに購入できる中古車を検討する人が多く、新車購入層が中古車市場に流れているようで、特に年式が新しいクルマに人気が集まっています。
――今後、中古車市場はどう動くのでしょうか。
西村 新型コロナの影響で、新車から中古車に乗り替える動きが前倒しになると思います。本来は新車を買いたい層がコロナ禍で中古車を購入した場合、その後また新車派に戻るかといえば、それは考えづらい。なぜなら、同じ予算でも中古車購入の方が圧倒的に選択肢が豊富だからです。中古車は壊れそうという漠然とした不安も、実際に乗ってみると意外と問題ないと感じる方も多いはず。
そのため、これまではゆるやかに新車から中古車へと移行していた流れが、より早まっていきそうです。また、価格面のメリットだけでなく、中古車でしか味わえない満足感を体験することで、新車から中古車への移行がより進むでしょう。
ただ、中古車市場は金額ベースでは拡大しているものの、購入台数は18年の261.9万台から261.1万台と微減しました。今回、中古車購入単価が上がったのも、19年10月の消費税増税前の駆け込み需要の影響がありそうです。
今後も新型コロナの影響が続いていけば、消費者は購入単価を抑えたり、購入を見直したりする動きが出てくる可能性もあります。次回の調査では、これまで右肩上がりだった市場規模にどのような影響が出るのか、注視する必要があるでしょう。
(構成=長井雄一朗/ライター)