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北海道、新幹線開通で観光客激減危機のエリアも…ニセコ、豪州人客が突然4割減

取材・文=椎名民生
北海道、新幹線開通で観光客激減危機のエリアも…ニセコ、豪州人客が突然4割減の画像1羊蹄山(「Thinkstock」より)

 オーストラリア人など外国人に人気のリゾート・ニセコエリア(北海道倶知安町・ニセコ町)で、「宿泊税」の導入が議論されている。

 宿泊税とは、地方税法が定める以外に自治体が独自に設けることのできる法定外目的税、宿泊税は東京都が2002年、大阪府は今年1月から取り入れている。いずれも、1人当たりの宿泊料が1泊1万円以上の場合、料金に応じて100~300円を、宿泊施設を通じて徴収する。使い道は観光整備費に限定する意向という。なお、北海道も3月の道議会で、観光振興のための財源確保策のひとつとして、宿泊税構想を打ち出している。

 宿泊税を推進する田中義人倶知安町町議会議員は、このように語る。

「倶知安町はバブル期のペンションブームの際にインフラ整備が行われました。そのため、2000年代の約8割を新しくするオーストラリア資本による再開発に対応できたのです。19年には倶知安町のニセコHANAZONOリゾートにパークハイアットが、20年にはニセコ町のプリンスホテル系ゴルフコースの跡地にリッツカールトンも建設されます。ニセコ町はインフラ整備、特に下水整備が不十分です。2町間でも宿泊税の使途に違いがあるでしょう」

 また、これまでは地域の人々も観光客の急増を経済的に実感できにくかった。

「特にリゾート施設が集積する倶知安町・ニセコ町では、観光客にとっても、受け入れ側の地元にとっても、さまざまな混乱や不便を余儀なくされています。外国人観光客を中心にした宿泊者に負担していただいた宿泊税は、観光客へのソフトインフラサービスの整備やハードインフラの整備に充てるといった使い道を明確にしなければなりません。さらに、その先には熱海市のような別荘税(住民でない居住者への住民税の代わり)も検討し、不動産所有者への公的サービスを充実させるために利用すべきではないかと考えています。経済を域内循環させて、観光を産業として認められやすいようにしていかなければなりません」(同)

 税負担の増加となれば、宿泊者数の減少を危惧する声もある。

「行政サービスに上乗せしたサービスを受けることへの税負担という位置付けを明確にすれば、外国人観光客も理解してくれます。現に私が話すと、外国人もサービスを受けることにお金がかかることに理解を示しています」(同)

ニセコから近隣リゾートへ観光客が流出?

 倶知安町の倶知安駅には25年に北海道新幹線が開通するが、喜んでばかりもいられない。「ニセコエリアにとっては、お客さんが出ていくツールになっていく」(同)とみられるためだ。

「これまでもパウダースノーで有名なニセコから、キロロ(余市)、富良野と、“シャンパンタワーの法則”のように、その外国人観光客はその行動範囲を広げてきました。この流れを日本各地に波及させていきたいと考えています。みんなでシェアする流れが必要なのです」(同)

 グローバルに展開するリゾートに詳しい田中議員は、現状に懸念を示す。

「ニセコエリアだけではなく、広い視点で考えないといけないと思っています。実は、ニセコエリアのオーストラリア人の利用者が前シーズンから4割減ったという数字が出ています。その分、アジアやヨーロッパのスキーヤーが増えているので、表面上は変わりがないのですが。減少した理由は、オーストラリア人が多すぎること、パウダースノーを売りにするスキー場の競争率が高まったこと、またホテルの宿泊価格が高くなったことなどの理由に加え、世界的に競争相手が顧客シェアマーケティングに乗り出しているためではないかと考えられます」(同)

 たとえば、米国では有数のスキーリゾート・コロラドのベイルは、カナダ・ウィスラー、オーストラリア・ペリッシャーなどを買収し、エピックパスという共通スキーリストパス、シーズンパス導入などグローバルな視点で展開している。日本のリゾートは、一体となってグローバルな流れに対応していないというわけだ。外国人観光客誘致でリードするニセコが、今後の日本のリゾート政策をリードできるのか、注目される。
(取材・文=椎名民生)

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