「anタッチャブル柴田にツッコまれよう!ツッコミにボケるバイト!」
「勇者ヨシヒコの行く手を阻む“魔物”役、大募集!」
芸能人に会えるなど、普段の生活ではなかなかできない貴重な体験をアルバイトとして募集する。そんなユニークな求人が話題を集めている。
アルバイト求人情報サービス「an」のワンコーナー『an超バイト』では、エッジの効いた求人を数多く扱う。運営元である総合人材サービス、パーソルグループのパーソルキャリア(旧社名:インテリジェンス)のanマーケティング企画部 宣伝グループ マネジャー、森久朋氏によれば、2011年11月に映画のプロモーションとして行った単発企画が最初の求人で、15年7月よりこうした求人に特化した『an超バイト』が誕生したという。
これまで募集したアルバイトの内容は、スポーツ系やアニメ系など多岐にわたり、ターゲットとなる若年層とのコミュニケーションツールとしても活用されている。
「求人サイトというものは、仕事を探すというニーズがないと利用されにくいものです。
当サイトの主なユーザーは学生を中心とした若年層ですが、彼らにしても常にアルバイトを探しているわけではありません。今この時点で『アルバイトを探していますか?』と尋ねても、『はい』と回答する方は学生全体の1割にも満たないでしょう。
そこで、『いざ仕事を探そうと思ったときは「an」を利用してほしい』というメッセージを伝えるには、いかに印象付けるかが重要です。そこで、エッジのきいたユニークなアルバイトを募集する『an超バイト』を立ち上げました。
また、『an超バイト』では、ユーザーが一歩踏み出すきっかけをつくりたいと考えています。アルバイトはその象徴的なものであり、自分の知らない、想像できない世界を見られるような企画をスタッフとアイデアを出し合いながら考えています」(森氏)
3名の募集に約3万名の応募
若者が日ごろ興味を抱いていることをタッチポイントにして企画を練り、SNSでの拡散を考えて、よりキャッチーで“人に教えたくなる”求人広告を心がけているという。
たとえば、「ガンバ大阪・遠藤保仁選手のフリーキックの練習をお手伝いするアルバイト」の募集では、「フリーキックの壁バイト」というキャッチコピーをつくることで、求人内容に興味を持たせる工夫をした。その甲斐もあって大きな話題となり、7名の募集に対して約1万4000名もの応募があったという。
「サッカーファンだけでなく、『新たな経験をしたい』という70歳の方からもご応募いただきました。また、身長190cmを超える方、名前に“壁”が含まれる方など、熱くユニークな志望動機が多かったです。
ほかにも、プロレスラーの天龍源一郎さんと長州力さんによる“日本一滑舌が悪い対談の書き起こしバイト募集”も話題となり、3名の募集に対して約3万名もの応募がありました。この様子は、テレビの情報番組でも取り上げていただき、募集終了後も大きな反響がありました」(同)
1万名を超える応募があっても、その志望動機のすべてに目を通す。上手な文章よりも、熱いメッセージが伝わり、心が動かされる動機を書いた人を選出しているという。条件に合っていれば誰でも応募することが可能で、「お金はいらないからやりたい」という人も少なくない。
同サイトの求人は、特別な体験ができる仕事内容も魅力だが、日給5万円をもらえる高額バイト、さらに全国どこから応募しても交通費が全額支給されるなど、アルバイトとしてはかなり「おいしい」条件だ。映画などのプロモーションが目的とはいえ、こんなに高い報酬を払うメリットはあるのだろうか。
「企画が話題になることで、「an」そのものの認知が非常に高まりました。『an超バイト』を始める前のツイッターのフォロワー数は約2万4000件でしたが、今では11万4000件に増えています。リツイートや『いいね!』の数も増えていて、効率的にブランディングができていると感じています。
また、一般的なオウンドメディアと広告のみの告知よりも、多くの方に拡散することが可能です。たとえば、映画のプロモーションなら、出演者に告知をしていただくことでサイトの認知度アップにつながりますし、映画の告知はサイト上でも行っているので相乗効果が得られます。こうした情報は、企業から伝えるよりも友だちやフォロワーから教えられたほうが興味を持っていただけるという特性があります。ユニークな求人を募集することで、映画をPRする、「an」を知っていただくという両方の目的を実現することができました」(同)
現在は「ランペ撮影バイト」として、ダンス&ボーカルグループ「THE RAMPAGE from EXILE TRIBE」と「an」がコラボレーションするウェブ動画の制作現場でのお手伝いを募集している。日給3万円と交通費全額支給のほか、メンバーとの記念ポラ撮影や、非売品の全メンバーサイン入りオリジナルポスターなども贈呈されるという。募集人数は3名で、9月25日まで応募を受け付けている。
商品や企業のブランディング戦略において、SNSはいまや無視できない存在となっている。情報が拡散されることで多くの人の目に留まるわけだが、ただ投稿しただけでは興味を引くことが難しい。ターゲットを明確にしたうえで企画を練り、さらにSNSで拡散される方法を考えることが重要といえそうだ。
(文=OFFICE-SANGA)
取材協力=森久朋(パーソルキャリア株式会社)
『an超バイト』