チケット入手を確実にするために、スポーツチームやミュージシャンなどのファンクラブに加入する人も多いが、収益のために目をつぶり、厳格な本人確認はせず、実質的に複数名義でのファンクラブ加入を放置しているとも聞く。
次に、2次流通においては、チケットの高額転売に対する規制の甘さが指摘できる。行き過ぎた高額転売の存在は、2次流通という確実な転売の場があるからこそ起こる問題であり、健全性を欠く高額な設定や、チケットを買い占めて儲けを得る、いわゆる不当な「転売屋」に対してはその常習性から厳しく制限をかけてしかるべきである。犯罪の温床につながるとの指摘もある以上、業者は我関せずの姿勢ではいられず、ガイドラインの設定は必要だと考える。
エンターテイメント先進国アメリカでの取り組み
エンターテイメント先進国であるアメリカでも当初、日本と同様のチケット流通問題が取り沙汰されていた。しかし、今日では1次流通と2次流通がお互いの情報を提供し合い、ダイナミック・プライシング(需給状況に応じて価格を変動させる)という柔軟な価格制度を導入し、需要と供給のギャップを埋めている。
チケット価格はきめ細かく分けられ、スポーツ観戦チケットであれば、天候や試合の価値(大記録がかかった試合やスター選手の出場有無など)により価格が変動し、供給過多であれば額面割れが起こる2次流通でも相互補完により、業界一体となってマーケットを形成している。
エンタメ業界のグローバル化を目指して
日本では、20年の東京オリンピック・パラリンピックだけでなく、19年のラグビーのワールドカップ、21年の水泳世界選手権大会も控えている。エンターテイメントのグローバル化を図る上でも消費者ニーズが汲み取れるように、業界全体の問題として捉え、1次流通と2次流通を対立軸ではなく、それぞれが有する情報を補完し合い、相互効果に基づくマーケットの活性化によって、音楽やスポーツをはじめとしたエンターテイメント業界の発展につなげるべきではないだろうか。
各関係者が消費者視点のもとに、業界の利権にとらわれず、健全なチケット流通の取り組みに向け、1次流通と2次流通の関係者の腹を割った話し合いが行われることを期待したい。
(文=編集部)