クラシックのコンサートともなれば事情が異なるが、人気アイドルやロックバンドのコンサートでは、会場に近づくとダミ声でチケットの売買を呼びかける「ダフ屋」がいるのが当たり前の光景だった。それは違法行為なのだが、余ったチケットを処分したい人や、会場に入りたいのにチケットを取れなかった人が彼らと交渉している姿は常に見かけられた。また、インターネットオークションが普及してからは、人気公演のチケットが高額で個人売買されるようにもなった。
しかし、最近はそのチケット事情が変わってきている。例えばジャニーズ事務所所属のグループやAKB48、ももいろクローバーZ(ももクロ)などの人気アイドルグループの公演で、ダフ屋やネットオークションといった非正規ルートで入手したチケットを持った客が入場できないようにする取り組みが始まっているのだ。
会員分のチケットには会員証確認つき
ファンクラブ会員に対してチケットの先行販売を行っている場合、入場時に会員証を確認する様子は数年前から行われていた。ダフ屋対策、オークション等での転売防止としては有効な手段に見えるが、実際には問題も多い。
例えば、会員1人が友人の分も含めて4枚のチケットを取った場合、4人が同時に入場しなければならないため、遅刻した人がいればその人は入場できなくなる、もしくは全員が揃うまで待って入場しなければならなくなる。
また、会員本人が体調不良や仕事の都合で参加できなくなれば、4枚すべて無駄になってしまう。しかも、人気アーティストの場合、希望日が集中すると別の日程に勝手に振り替えられることもあるので、どうしても都合がつかないこともあるだろう。そのような場合、数千円~数万円を捨てることになりかねない。
ももクロのコンサートは、本人確認では最先端を走っている。いち早く会員証にICチップを内蔵させ、本人確認を導入していたが、最近は顔認証を導入して話題となった。
ももクロは、当選したチケットがどこの席なのかを当日まで明かさないなど、チケットの価値をわかりにくくすることで転売による価格高騰をなくす取り組みを熱心に行ってきた。そして今度は、3カ月以内に撮影した写真を登録させ、当日はカメラの前に立つだけで認証できるシステムを導入した。
完璧に見えるシステムだが、同伴者に対しては有効な策を生み出せていない。先ほどの例と同様、ファンクラブ会員が代表して友人分まで数枚のチケットを購入することは珍しくない。その場合、会員本人は顔認証できるが、同伴者の認証は難しい。
例えば、チケットを5枚入手した会員が、ネットなどで4枚を他人に高額で転売し、当日は待ち合わせて会員がほかの4人を引き連れて入場することも可能だ。
親のクレジットカードで決済すると入場できない?
もう一つ、野放しに近い状態だったのが、一般販売分のチケットだ。人気公演の場合、一般販売は絶対数が少なく認証なしで入場できるため、ネットオークションで高騰する傾向にあった。そこで最近は、一般販売分についても取り締まる動きが出てきている。
それは、クレジットカードを使った本人確認だ。決済をクレジットカードのみとし、当日は身分証明書を提示させることでカード名義と照合する。いわばクレジットカードを会員証の代わりにしているのだ。
しかし、家族のクレジットカードで決済した場合、問題が発生する。特にクレジットカードを持っていない若い人たちが、父親のクレジットカードで決済した場合、入場できないという事態も発生しているようだ。
現在、本人確認を行うコンサートは増える傾向にある。販売時に詳細な説明がなかったとしても、当日入場する際に確認されることもある。本人確認方法は、まだ抜け穴も問題点もあり、今後見直されていくだろう。そう考えると、オークションなどでチケットを買うことはリスクが高まっているといえるだろう。
クレジットカードを持っていない人も、自分名義のカードをつくり、チケットを購入するのが望ましい。最近は、未成年でも使えるプリペイド式のカードがある。例えば、コンビニエンスストアでも購入できる「Vプリカ」や、銀行口座から即時決済する「Visaデビットカード」であれば、使いすぎる心配はないので、親も子どもに持たせやすい。
今後、人気アーティストのコンサートチケット購入の際には、十分に情報収集して正規のルートで入手することをお勧めしたい。
(文=編集部)