――なぜ、銀行が無担保カードローン事業を強化するようになったのでしょうか。
宇都宮 現在、企業は利益を上げている半面、新たな事業投資に対する意欲が減退しており、内部留保が約400兆円も貯まっています。本来であれば、その内部留保を従業員などに還元するか、非正規社員を正規化するなどの措置を取るべきです。
銀行もお金がだぶついていて新たな融資先を開拓する必要に迫られ、結果的にメガバンクも地銀も無担保カードローン事業を強化するようになったのです。
ところが、銀行の無担保カードローン事業は改正貸金業法に基づく総量規制などの適用外であり、年収の3分の1を超えても新規に貸し出すことが可能です。また、サラ金の場合は50万円以上であれば源泉徴収など収入証明の提出が義務付けられていますが、銀行の無担保カードローン事業は対象外です。
その結果、多くの銀行はホームページで無担保カードローンについて「来店不要」「所得証明不要」「改正貸金業法の対象外」「パート、アルバイトでも貸します」といった、以前のサラ金業者のような謳い文句を掲げています。そして、それを見た、お金に困っている人が引き寄せられているのです。
今や銀行にとって無担保カードローン事業は大きな稼ぎ口となっていますが、審査や取り立ては銀行と親密な関係にあるサラ金業者が行っているのが実態です。
銀行カードローンの需要の裏に貧困と格差の拡大
――そもそも、なぜそんなにお金を借りる人が多いのでしょうか。遊興費に充てているのでしょうか。
宇都宮 そうではありません。多くは貧困が原因です。2014年に日本弁護士連合会消費者問題対策委員会で破産の理由をまとめていますが、「生活苦・低所得」が24.1%、「病気・医療費」が8.29%、「失業・転職」が7.94%、「給料の減少」が5.39%で、「ギャンブル」は1.55%、「浪費・遊興費」は2.39%にすぎません。
また、カードローンの支払いをリボ払いにしたため借金の総額がわからなかったり、いつまでたっても元本が減らなかったりというケースも増えています。銀行が無担保カードローン事業を強化したことによって、減少傾向にあった破産件数が昨年は伸びてしまい、今年はさらに昨年を上回ることが予想されます。想像以上に貧困と格差が広がっている実態があるのです。