作業服でトップシェアを誇るワークマンの快進撃が続いている。同社の2021年3月期第2四半期決算短信によると、20年4月1日~9月30日の四半期純利益は前年比27.1%増となった。昨年はさまざまなアパレルブランドが苦境に立たされ、ブランド終了や倒産が相次いだが、ワークマンは粛々と店舗数を増やし、21年1月現在、系列店を含めて全国に902店を展開している。
中でも注目されているのが、昨年10月にオープンした新業態「#ワークマン女子」だ。オープン当初は行列ができるほどの盛況ぶりだったという同店に、実際に行ってみた。
ワークマン初の女性向け業態
神奈川県横浜市、JR桜木町駅の目の前にある大型商業施設「コレットマーレみなとみらい」は、神奈川県内最大級の無印良品など、さまざまなテナントに加え、シネマコンプレックス横浜ブルク13が併設されており、平日でも多くの人で賑わう。このコレットマーレが昨年10月にリニューアルし、ワークマンの新業態「#ワークマン女子」がオープンした。
#ワークマン女子は、同社初の女性をメインターゲットにした旗艦店。開店初日の10月16日には3時間待ちの大行列ができてしまい、翌日以降は新型コロナウイルス感染防止のため整理券を配布するほどの盛況となった。筆者が訪れた1月初旬は整理券こそ配られていなかったが、隣接するアウトドア用品店に比べるとかなり客が多い印象。店内は少々“密”な状況で、人気が続いているようだ。
店舗入口に立つと、まず目に飛び込んでくるのがピンク色の巨大なバラとブランコのオブジェ。その存在感に度肝を抜かれるが、これこそが同店最大の特徴でもある「フォトスポット」だ。#ワークマン女子の「#」は、インスタグラムなどのSNSで使われるハッシュタグを意味している。店内にフォトスポットを設置して、これまでワークマンとは縁遠かったインスタ世代などの若い層を取り込む狙いがあるという。
ニュースリリースによると、当初は男性社員のみでインスタ映えスポットの企画を進めたが、企画案を女性社員に見てもらったところ、「センス悪すぎ」「そもそも縦長にしないとインスタ画面に入らない」など「歴史的な酷評」を受け、担当者を総入れ替えした経緯があるという。今となっては、初案がどれだけひどい企画だったのか見てみたい気もする。
鳴り物入りで導入されたインスタ映えスポットだが、筆者が滞在した1時間弱の間にブランコで写真を撮っていたのは、妙齢のカップル1組と、小さな子が「わくこ!」で遊ぶ姿を見かけたのみ。ターゲットとなるインスタ女子が食いついている場面には遭遇できなかった。
しかし、SNSにはこのロケーションを使った写真があふれているはず、とインスタグラムで「#ワークマン女子」を検索。すると、大量に出てきたのは、ワークマンのアイテムを身に着けてキャンプや釣りを楽しむ女性たちの写真だった。店内の写真も数点見つけたが、どれも自称インフルエンサーによる投稿だったので、一般層にはあまり活用されていないようだ。
検索結果を見るに、実際のワークマン女子たちは店舗そのものの“映え”よりも、アウトドアシーンでアイテムを活用している“映え”の方に魅力を感じている印象だった。
とはいえ、女性の入りやすさをコンセプトに掲げているだけあって女性客が多く、カップルや家族連れが中心。中には、ランニングの途中で立ち寄ったのか、ウインドブレーカーとショートパンツにスパッツを履いた出で立ちで商品を選んでいる人も。職人がメインターゲットで道路沿いにある従来のワークマンの客層とは一線を画していることは確かだ。
奥には「#ワークマン男子」のコーナーも
入口付近には女性専用の衣類が陳列され、中央にはユニセックスアイテムが並ぶ。カジュアルウエアはレディースが多めだが、スポーツウエアはユニセックスが大半を占めており、アウトドアウエアの「FieldCore」とスポーツウエアの「Find-Out」などのプライベートブランドも扱っている。さらに奥に進むと「#ワークマン男子」のコーナーもあるので、男女で買い物ができるのも特徴だ。
ちなみに、#ワークマン女子の売り場面積452平米は、路面店やショッピングモール店を含めてワークマン最大級の規模だという。前述のニュースリリースによると、店内の商品はレディース40%、ユニセックス20%、メンズ40%で構成されている。#ワークマン女子とは言いつつ、メンズとレディースの割合は同じなのだ。
一方、当然というべきか、従来のワークマンで売られている作業着や安全靴などの商品は#ワークマン女子では見かけなかった。職人が仕事のアイテムを求めて#ワークマン女子に行っても、目当てのものは見つからない可能性が高いので注意しよう。
3月19日には#ワークマン女子の新店舗がオープン予定だとか。今度はいったい、どんなインスタ映えスポットが設置されるのだろうか。そして、今度こそワークマンが思い描く通りのワークマン女子が巷にあふれることを願ってやまない。
(文=谷口京子)