ビジネスジャーナル > 企業ニュース > Panasonicニュース > パナソニック批判はもうやめろ!  > 2ページ目
NEW

パナソニック批判への違和感 復活担う社内ベンチャーと“わかりにくい”経営の強さ

【この記事のキーワード】, ,

「大きな投資をした案件でも、すぐに撤退すればいいじゃないか」「それを決めた社長や取り巻きが辞めればいいではないか」と口では簡単に言うが、ではこの時期に液晶テレビに対抗できる差別化集中の戦略をとるとすれば何があったのか、具体的に提示し事業計画を記事にしてもいいようなものだ。それは当事者にしかできないことであり、やろうとしてもさまざまな葛藤があることは、当該企業の社内の人間にしかわからない。

 経営者も一人の人である。長所もあれば短所もある。そうした点を含み置いた上で、第三者が一時点の戦略をクローズアップすることは絶対的な悪なのだろうか。その前向きな判断をスケッチするがごとく模写しケースを書くのは犯罪なのか。

 このような行為が禁止されれば、経営学で使うケース(研究・教育用事例)や論文は書けない。それらは必ずしも長期的な現象を対象にしたものばかりではないからだ。そのスタイルには定型があるようでない。パナソニックを丹念に取材してきたジャーナリストがつくる「刺激的な批判記事」とは似て非なるものである。

 私もビジネス誌編集経験者であることから経営学者に加えてジャーナリストの肩書をメディアでは使われているが、大学で専任教授を務めていることもあり、専業ジャーナリストとは一線を画している。博士(経営学)の学位を取得しているとはいえ、今のところ、「アカデミック・ジャーナリスト」と自称するほどの確固たる定義も持っていないし、それほどの自信家でもない。今どき、大学院博士後期課程の(「学位=博士」を取得していなくても)単位を満了したジャーナリストは少なくない。それぐらいでは、アカデミックの冠は恥ずかしくてつけられない。

 経営者と私を含む物書きの最大の違いは、結果責任が強く求められるか、書きっぱなし、言いっぱなしで済ませるか、である。昨今ではリストラを断行した経営者は、人を斬ったのだから、良い結果を出せなければ火あぶりにされてもしかたあるまい。

 あるパナソニックのOBは、次のようなコメントを述べていた。

「経営戦略の失敗と後から言われますが、中村さんも大坪さんも運が悪かった。気の毒かもしれませんが、いい思いをした時間もあったのですから、個人的には満足なのでしょう。しかし、個人的には、とは言ってはならないと思います。経営者は個人ではありません。一国一城の主です。戦国時代は一人切腹すれば家臣は助かりましたが、現代は複雑です」

 このコメントがすべての社員の思いを代表しているとは言えないが、一つ注意しておかなくてはならないフレーズがある。「いい思いをした時間もあったのですから、個人的には満足なのでしょう」である。中村氏や大坪氏が満足しているか否かは定かではない。しかし、この一言が思わず口をついて出てしまうのは、サラリーマン組織ゆえの事情がある。

●サラリーマン組織の事情

 同族(世襲)企業であれば、「創業家出身者なのでしかたない」というロジックが働くだろうが、サラリーマンがトップになると、社内でいろいろな意見が交錯する。なぜなら、同じ釜の飯を食べてきた人という思いが潜在心理としてあり、ヒーローである間は黙っているが、業績が悪くなってくれば、「なぜ、あいつがあんなに高い報酬をもらっているのか」「能力はあったかもしれないが、上り過ぎていつの日か、元から力を持ってる王様をきどるようになってしまった」と非難するようになる。また、そのような声が、マスコミが好む情報源となり、「……」のスタイルで意図する文脈に合った発言をつなげて既成事実が構成されるのである。それが、ネット社会の広範な伝搬力に乗り動かざる評判になってしまう。事実は企業や世の中を動かすことはあるが、それは真理とは言えない。

 中期経営計画(2013~15年度)を発表する前日の3月27日、会長の席にある大坪氏は津賀社長に退任を申し出た。6月26日付で特別顧問になる。

 津賀氏は「その理由は言えない」という。一言では言えば誤解が生じる可能性があるのか、それ以上に外部の人が知り得ない複雑な理由があるのだろう。一言コメントを述べて、一時代を担った社長、会長経験者の真意が歪められ、悪しき評判が定着するのを危惧したのかもしれない。

BusinessJournal編集部

Business Journal

企業・業界・経済・IT・社会・政治・マネー・ヘルスライフ・キャリア・エンタメなど、さまざまな情報を独自の切り口で発信するニュースサイト

Twitter: @biz_journal

Facebook: @biz.journal.cyzo

Instagram: @businessjournal3

ニュースサイト「Business Journal」

パナソニック批判への違和感 復活担う社内ベンチャーと“わかりにくい”経営の強さのページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!