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垣田達哉「もうダマされない」

危険な食品添加物「リン酸塩」、セブンやイオンが使用中止の裏事情

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
危険な食品添加物「リン酸塩」、セブンやイオンが使用中止の裏事情の画像1「Thinkstock」より

添加物がよくないことを認めた?

「週刊現代」(講談社/11月4日号)で食品添加物のリン酸塩が取り上げられた。『血管を詰まらせ、骨が脆くなり、腎臓にもダメージが 危ない食品添加物「リン酸塩」が入っている食べ物はこれだ』と銘打って大特集を組んでいる。筆者も取材を受け、以下のコメントが掲載されている。

「ハム・ソーセージなどは、リン酸塩を入れることによって肉の水分を保つことができ、プリッとした食感になる。私たちがふだん食べているハムやソーセージは、実は肉本来の食感ではなく、リン酸塩によって生み出されている」

「リン酸塩が使われていても明記する必要のない一括表示のpH調整剤、酸味料、イーストフード、乳化剤、かんすい、膨張剤などは添加物のブラックボックスと言われている」

 この特集で注目されるのは、添加物に対する大手企業の取り組み方に変化がうかがわれることだ。「週刊現代」のアンケートに大手コンビニのセブンイレブンとファミリーマートは共に、添加物使用削減に取り組んでいる旨を回答しているが、従来、こうした添加物の危険性を訴えようとするアンケートに対しては、小売企業側は「国が使用を認めている添加物だ」「安全性に問題はない」「法律で定められている使用基準を守っている」といった回答がほとんどだった。

 ところが、セブンは過剰摂取の危険性(カルシウムの吸収を妨げ骨粗鬆症の原因になる)を、ファミマは添加物使用の弊害(リン酸塩を減らすことで鶏肉本来の食感を引き出した)を堂々と述べている。まるで、添加物の問題点を指摘したい週刊誌の代弁者のようだ。今まででは考えられないことである。

 実はセブンは、2007年3月14日に公表したニュースリリース「『焼きたて直送便』をリニューアル!」のなかで、同月から「リン酸塩未添加」に取り組んでいることを強調している。しかし、10年も経っているのに、リン酸塩未添加の商品がほとんど増えていない。これは「取り組みの効果が出ていない」のではなく、「10年も続けている」と捉えるべきだ。だからこそ、ここに来てファミマも追従したのである。

 ちなみに、イオンリテールも「週刊現代」のアンケートに対し、「グリーンアイフリーフロム」シリーズのハム、ソーセージ5品目では、リン酸塩を使用していないと答えている。

安全・安心志向の顧客を取り込む

 一般の消費者には、聞き慣れない添加物であるリン酸塩だが、無添加志向の顧客は一定数いる。小売企業側としては、そうした顧客を逃がさないために、添加物準フリー商品は必須アイテムなのだ。しかも、付加価値商品であり、わずかだが高額商品なので、売上や利益に貢献する。

 しかし、他の添加物いっぱいの商品に影響が出るので、大々的に宣伝することはできない。セブン、ファミマ、イオンにとって今回のアンケート取材は「渡りに船」だっただろう。自ら宣伝できないことを週刊誌が代わってやってくれる。しかも、こうした記事は、安心安全志向の強い人が読む。「セブンやファミマ、イオンには、そんな商品があるんだ。もう一度売場をじっくり見て見よう」となれば、こんなおいしい宣伝はない。

 たとえ大手小売企業であっても、安売りだけでは商売は成り立たない。今まさに、健康志向、安全・安心志向の顧客をいかに取り込むかが、生死を分けるといえるだろう。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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