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国がタクシー業界を保護してウーバーを規制、国民にとって望ましいことなのか?

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授

 中国に駐在するある商社の知人は、滴滴出行のサービスはタクシーより便利だと話していた。タクシーよりも料金は安い。対応もよいそうだ。個々のドライバーによってサービスの差はあるが、同社の成長はライドシェアの魅力が高いことを示している。

 20年の東京五輪の開催を考えれば、首都圏でのライドシェアへのニーズは拡大する可能性が高い。このままの状況が続けば、白タク営業は増加するだろう。規制(法律)の運用が、現実および潜在的な需要にうまく対応できていないことは明らかだ。

ライドシェアに困惑するタクシー業界

 一方、国内での議論を見ていると、ライドシェアの全面解禁は容易ではない。既得権益層であるタクシー業界にとっては、まさに“黒船来襲”というべき一大事である。ライドシェアが解禁されれば、太刀打ちできないと恐怖感を持つ経営者も多いという。それが規制緩和への議論を進みづらくしている。米国のウーバーテクノロジーズはタクシー配車を優先して国内でのビジネス開拓を進める方針を示した。規制緩和への期待は後退しているともいえる。

 わが国のタクシー料金は公共料金として扱われ、政府によって価格設定への認可がなされてきた。競争原理が働きづらい環境が続いてきたのである。優れたサービスを提供する企業がシェアを高め、その結果としてサービス価格が形成されてきたわけでは必ずしもない。

 そのために、業界団体はライドシェアが普及すると、運転技術が未熟なドライバーが増え事故につながる、乗客とのトラブルが増えるなどの懸念を強調し、規制緩和に反対している。タクシーの配車を行うアプリを開発し、全国各地域での利便性向上を進めればライドシェアは必要ないとの主張もある。

 これでは、わが国の状況は変わらないだろう。国内の法律がタクシー業界を保護し、タクシー関連企業が経営の革新よりも、現状維持を重視していることは明らかだ。

 一部では、新しい取り組みを進める動きもある。ソフトバンクの仲介を受けて、第一交通産業は滴滴出行と業務提携を行うことを決めた。当面はタクシーの配車サービスの分野で協働が進む見通しだ。今後の展開は見守るしかないが、白タク営業が増加するのであれば、こうした提携がライドシェア推進の足掛かりとなる可能性は排除できない。

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