東京五輪やリニア中央新幹線の建設工事などで久しぶりに好況にわく建設業界。ゼネコンの決算も好調だ。
そんななか今月、東京地検特捜部は入札不正の疑いでスーパーゼネコンの一角、大林組に強制捜査に入り、激震が走った。任意を含めれば、建築中心の竹中工務店を除くスーパーゼネコン全社、鹿島建設、大成建設、清水建設、そして大林組の担当役員らに事情聴取を行なっている。さらにJR東海社員が非公開の入札情報漏洩に関与しているとの報じられており、発注者と受注者双方が入札不正にかかわっている可能性も出てきた。
かつて、ゼネコン各社は「談合決別宣言」を行ない、「談合屋」を社内から一掃した歴史を持つが、リニア工事をめぐり今、何が起こっているのか。一級建築士で建築エコノミストの森山高至氏に話を聞いた。
「調整」復活
――今回、東京地検は入札不正の疑いで大林組へ強制捜査を行いました。これをどう見ますか。
森山高至氏(以下、森山) 一時期、建設業界の談合により、ゼネコンや政治家にも逮捕者が出ました。それ以降はしばらく聞かなかったのですが、東京五輪・パラリンピック工事やリニア工事が本格化し建設業界も潤うなかで、「調整」の動きが復活してきたのではないでしょうか。この建設好況時代においてゼネコンも調整せざるを得ないのか、あるいは調整で乗り切ろうとしているのか。
入札の際にみんなで集まって「談合」するようなカタチではないでしょう。しかし、ある特定の会社が断るか入札するかについては事前の調整をしているのではないか。そういう意味では、ゼネコンの体質は本質的に変わっていないのかなと思っています。
――昔、ゼネコンでは業務畑の人間が「談合屋」の仕事を請け負いましたが、一時期すべてそれらの社員を退職させました。それが復活したのですか。
森山 昔は、仕事を受注するための「談合」でした。今は仕事を選ぶ「選別受注」の時代に変わっています。そこで話し合いや調整をしています。それは公共工事も民間工事も変わりません。かつてのように公共工事は「必ず儲かる」「おいしい」と言えなくなってきています。ですから工事を見極めて、大手でも中小でも官民工事問わず、「これはやりたい」「これはやりたくない」という思惑があると思います。建設現場は一定の工事量であれば、使う労力や資材もほぼ同じですから、それなら単価の高い工事を受注したいと意向が働くのは当然のことです。