――調整ができる環境が整っているということでしょうか。
森山 スーパーゼネコンのなかでも、清水建設の宮本洋一会長、大成建設の山内隆司会長、村田誉之社長、大林組の白石達社長は、東京大学工学部建築学科の内田祥哉名誉教授研究室の出身者です。白石社長と宮本会長は同期です。偶然といえばそれまでの話ですが、同じ研究室からほぼ同時期に、日本に5社しかないスーパーゼネコンの会長・社長がこれだけ輩出するのは珍しいです。
内田氏は、日本建築学会会長をつとめたことのある大御所であり、いまでも建築界に隠然たる力を持ちます。内田氏の趣味はスキーとゴルフで、内田門下生はいまでも内田氏のもとへ集います。ただ、誤解をしてほしくないのは、内田氏がゼネコンの業務にからんでいることは決してありません。たまたま優秀な内田門下生がゼネコン首脳の地位を占めることにより、話し合いがしやすくなった環境が整ったということです。
我々もそうですが、高校や大学のクラブ活動や研究室の関係はずっと続くものです。ですからおおげさに談合関係者が集まらなくても、お互いに「やぁ元気」と言える関係です。そういう意味では、今のゼネコンは社長同士で「ツーカーの仲」といっても過言ではありません。ですから大林組の件でも、飲み会でもいいですし、携帯電話でやりとりしてもいいわけで、ゼネコン首脳同士が、「ウチの営業が困っているんだよね」と話ができる間柄なのです。
ちなみに、新国立競技場の設計を担当した隈研吾氏も内田研出身者であり、建設を受注した大成建設社長は2代続けて内田研出身者です。しかも隈研吾氏と村田社長は神奈川県の栄光学園高校からずっと同級生で、それから一緒に内田研に入り、我々が想像している以上に深いパイプがあるのです。
JRとゼネコンの関係
――ゼネコンは否定するかもしれませんが、調整が復活した理由はなんでしょうか。
森山 建設景気が上向いたことにあります。ゼネコン各社は、仕事の奪い合いから、「いい仕事を選びたい」という姿勢にシフトしています。今は仕事を受注する前に「この仕事は利益が出るか」と考え、入札するかを検討しています。