日本の製造業で、改竄の連鎖が止まらない。神戸製鋼所に続き、三菱マテリアル、さらには日本経済団体連合会会長・榊原定征氏の出身企業である東レでも品質データをいじっていたことが発覚した。
非鉄金属大手、三菱マテリアルの竹内章社長は11月24日、子会社が製品データの改竄をしていることを2月に把握しながら、10月下旬まで問題のある製品の出荷を続けていたとして、「多大な迷惑をおかけしたことを深くおわびする」と陳謝した。
不正は神戸製鋼所と同じ構図だが、神戸製鋼所は経営陣が把握した段階で、該当製品の出荷は停止していた。他方、三菱マテリアルは経営陣が不具合を知りながら出荷を継続していたことになる。そのため、三菱マテリアルはコーポレートガバナンス(企業統治)の面で神戸製鋼より悪質との批判が強まっている。
神戸製鋼所の不正が明らかになり社会問題に発展したため、三菱マテリアルは仕方なく、それまで隠蔽していた不正を公表することにしたとみられる。大騒ぎにならなければ、公表することはなかった可能性が高い。
最初に問題が発覚したのは子会社の三菱電線工業だった。三菱電線は今年2月に、社内検査で配管などのパッキングに使うゴム製品のデータを改竄していたことが明らかになった。3月に村田博昭社長ら経営陣に伝えられたが、顧客に通知したり出荷を停止するなどの措置はとられず、10月23日に出荷を停止するまで問題製品の出荷を続けていた。
三菱電線にとどまらない。三菱伸銅では16年10月から17年10月にかけて、自動車に使われる銅合金製品などでデータを改竄して出荷。三菱アルミニウムでも基準に満たないアルミ製品を出荷していた。不正品の出荷先は三菱電線が航空・宇宙分野など229社、三菱伸銅は自動車部品など29社、三菱アルミは輸送業界など16社に上った。
三菱マテリアルの子会社が扱う素材は鉄道車両や航空機、自動車などに幅広く使われている。英紙フィナンシャル・タイムズは「航空機大手の米ボーイングと欧州エアバスは自社製品への使用状況を調査中」と報じた。日本のものづくりの信用低下に拍車をかける結果になった。
実は、三菱マテリアルは“2連敗”なのである。
神戸製鋼所が納入品の品質検査データを改竄して出荷した子会社、コベルコマテリアル銅管は、三菱マテリアルとの共同出資だ。神戸製鋼が55%、三菱マテリアルが45%出資している。コベルコマテリアル銅管秦野工場は2度にわたり日本工業規格(JIS)の認証を取り消された。