それからもうひとつ、最高裁の判事のなかでいろんな議論があってもよかったのに、全員一致ではないにしても、ほとんど意見が割れなかったわけですね。いくつか補足意見や少数意見が入ったりしていますが、大法廷での議論としてはおかしいと思います。
インターネットなどの新しい技術があるなかで、将来、受信料を徴収する条件を広げようという動きがありますが、それ以前にテレビがあれば払わなければいけないような状況になってきたときに、テレビがあってもNHKを見ないという若い人が多いわけですよね。『見ない人にも払え』という問題をどうするのか。これから受信料を払わなければいけないような人たちが、納得できる判断であったのかというと、そうはいえないでしょう」
安倍政権へ肩入れ
最高裁大法廷は受信料制度について、「憲法の保障する国民の知る権利を実質的に充足する合理的な仕組み」と指摘した。はたしてNHKは「知る権利」に値する、公平中立な報道をしているといえるのだろうか。
「放送法4条では、NHKに限らず、放送機関は公平な放送をしなければならないと書かれています。しかし、公平中立というのは、立場によっても見方は違ってくるわけです。たとえば私から見ると、ここ数年の国政選挙に関するNHKの放送を見ると、明らかに今の政権に対する肩入れといわれても仕方がない報道をしていると見受けられます。先の総選挙においては、投票前日夜に放送された『衆院選特集 党首奮戦~密着12日間の熱戦~』で各党首の遊説風景などを中心に放送していましたが、政権与党である自民党に一番長い時間を使って、安倍晋三首相が喋る場面も長かった。
特に問題なのは、内閣総理大臣としての安倍さんと、自民党総裁としての安倍さんというのを、きちんと区別していないという点です。選挙の前に辞任した稲田朋美前防衛大臣が都議選の時に、自民党候補を応援する集会での演説で、『防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい』と発言して問題になりましたが、これはやってはいけないことなわけです。あくまでも一議員であるとか自民党の幹部としてなら『お願いします』と言っていいですが、大臣というのは政府の役職ですから、特定の政党を応援していいということになりません。もし仮に、安倍さんが『内閣総理大臣として自民党に入れてください』と言ったら、それはもう大問題になるわけです。