2021年、日本はフェムテック元年といわれている。女性を意味するフィメールとテクノロジーを掛け合わせた造語である。最新の技術を使って生理痛や更年期障害といった女性特有の悩みを改善し、病気の早期発見や生活の質の向上を目指す。
ファーストリテイリング傘下のジーユー(GU)がフェムテック市場に本格参入した。オムロンヘルスケアと協業。プロジェクト「GU BODY LAB」を立ち上げ吸水機能付のショーツなど9商品を発売した。吸水ショーツ「トリプルガードショーツ」は防水シート、吸水シート、さらにもう1枚のシートの3層構造になっていて、約15~20ミリリットルの液体を吸収する。価格は税別1490円。
ブラジャー「ナイトブラ」(価格は同1490円)は伸びる方向が異なる生地サイドパネルを使用し、就寝時のバストの横流れを軽減。柔らかなカップと肌触りのよいコットン生地を用いることで快適なフィット感を実現したという。2019年、GUは今後の成長戦略のコンセプトとして3つのコネクト宣言を行った。「健康・安心・快適志向」をキーワードにした商品を売り出しており、「GU BODY LAB」は、その一環だ。
新しいプロジェクトでは女性特有の健康上の課題に着目。すべての女性が自分らしく健康的な毎日を送れるようなアイテムの開発・販売をする。開発にあたりオムロンヘルスケアがフェムテックに関する情報をGUに提供している。欧米ではフェムテックは最新技術を駆使するヘルスケア産業の一角を占める新たな分野と位置付けられている。
同じファストリ傘下のユニクロは、マスク市場においてエアリズムマスクで旋風を巻き起こした。花粉などの粒子を99%カットするフィルター、紫外線を90%カットするメッシュ素材、そして汗ばんでも、なめらかな肌触りを維持するエアリズムマスクは大人気を博した。女性の健康などの悩みをテクノロジーで解決するフェムテック市場への日本企業の参入は遅れている。GUが先駆者となれるのか。
管理アプリから生まれたフェムテック
フェムテックという言葉はデンマーク人のイダ・ティン氏が2012年に開発した生理周期を管理するアプリ「Clue(クルー)」への投資を募るために使ったのが初めてだ。投資家の多くは男性なので、女性特有の悩みに関する言葉を使うと資金を得るのが難しいとされていた。「Female(女性)」と「Technology(技術)」を掛け合わせた「Femtech(フェムテック)」という言葉を使えば投資家たちの関心を集めることができるとイダ・ティン氏は考えた。
フェムテックはダイバーシティー(多様性)が重視される社会では新たなビジネスの領域と見なされている。フィンテック(Fintech)という用語が急速に広まってきた時期と重なる。こちらは「Finance(金融)」と「Technology(技術)」を合わせた造語。世界的に普及したスマートフォンのインフラやビッグデータ、人工知能(AI)などでの最新技術を駆使した金融サービスを指す。スマホによる決済、仮想通貨、ネットを通じた資金調達のクラウドファンディングなど市場規模は爆発的に拡大した。
米調査会社ピッチブックによると、世界のフェムテック市場への投資額は2008年には25億円にすぎなかったが、18年には、その17倍強の437億円に増大した。米調査会社のフロスト&サリバンの試算によると、フェムテックの25年の市場は5兆円規模に達すると見られている。投資対象として魅力的な市場になってきたわけだ。
日本は2021年がフェムテック元年
日本でも動きが出てきた。世界初のフェムテック専門のオンラインストアを運営するフェルマータ(東京・品川区、杉本亜美奈社長)とガンホー・オンライン・エンターテイメントの創業者で投資家の孫泰蔵社長が率いるミスルトウジャパンが、フェムテック企業の支援に特化した合同会社、フェルマータファンドを20年2月に設立した。
杉本氏はタンザニア育ち。英国、ドイツの学校に通い、東京大学で修士号を、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院で博士号を取得した。19年にフェルマータを設立。孫氏の実兄はソフトバンクグループの孫正義氏である。昨年秋に活動を開始し、フェムテックに特化した25億円規模の投資ファンド(フェルマータファンド)を立ち上げた。アジア・日本のフェムテックのスタートアップ企業に投資する。
フェムテック特化型の投資ファンドの設立やGUのフェムテック事業への参入が日本におけるフェムテック市場の扉を開ける起爆剤になるものと期待されている。
(文=編集部)