元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな通貨は「地域通貨」です。
仮想通貨の取引が盛んに行われています。誰でも簡単に始められ、24時間スマートフォンで取引できるという手軽さが受けているようです。昨年1月に7万円だったビットコインが12月には一時、200万円以上の高値をつけ、主婦や靴磨きの少年すらも「楽をして稼ぐ」ことができたようです。1630年代に起きた「チューリップ・バブル」を彷彿とさせる仮想通貨バブルですが、課税関係はどのようになっているのでしょうか。
ビットコインなど仮想通貨の急激な値上がりを受け、1月に入り国税当局は本格的に投資家らの調査を始めたと報じられています。12月初旬にビットコインの時価総額は20兆円を超え、ビットコインに関する税金の総額は9兆円にも達するとの試算も出ています。
ビットコインの利益は税務署に筒抜け
都内に住むAさんは数年前からビットコインを購入し、利益を確定させるため一部を円に替えたり、ビットコイン決済に対応している小売店で買い物をしたりするなどしていました。しかし、確定申告はせず、ビットコインの売却で得た所得はすべてを自分の懐に入れていました。Aさんは「バレるわけがない」と考えていたそうです。そんななか、税務署からAさんの元へ突然、電話があったのです。
調査官は仮想通貨の取引所に照会をかけ、顧客リストを入手。売却益の多い顧客と、その顧客の確定申告状況を突合し、無申告と思われる人に電話連絡を行っていました。そのなかで、値上がりしたビットコインを売却したにもかかわらず、無申告だったAさんにも連絡したのです。
電話を受けたAさんは、突然のことに驚いたようです。ビットコインの取引状況は誰にも話していなかったはずなのに、どうして連絡が来たのか。Aさんは、日程をすり合わせて税務署に行くことになりました。その際、ビットコインの取引に使用している預金口座の通帳を持ってくるように指示されました。また、決済に使ったビットコインがあれば、可能な限りそれに掛かるレシートも提示するように要求されました。
2週間後、税務署の個人課税部門を尋ねたAさんは、ビットコインの売却で得た所得は、国税庁の公式見解がなかったため、申告が不要と認識していたと主張しました。確かに、調査が行われた当時、仮想通貨の売却益について所得区分が明確にはなっていませんでしたが、それにより課税を免れるものではありません。