東芝の不正会計を見抜けなかったとして、日本公認会計士協会は監査を担当してきた新日本監査法人を会員権停止2カ月の懲戒処分にした。
近年、カネボウやオリンパスなど企業の粉飾決算が明らかになるたびに、その監査法人が批判を浴びてきたが、現場で監査業務を行う公認会計士といえば、日本では医師、司法試験と並び国内では3大最難関資格とされる。にもかかわらず、ここ数年は公認会計士の余剰などが原因で「食えない資格」という負のイメージも強い。
そこで今回は5人の公認会計士に、「公認会計士界の現実」について語ってもらった。
「食えない士業」は過去の話?
――公認会計士が「食えない士業」というのは、本当でしょうか?
A 内部統制が監査対象になったりして、金融庁が合格者をすごく増やした時期がありました。しかし、リーマンショックが起きて、監査法人もビジネスとしてやってますから、業績が悪くなって採用を一気に絞ったことがありました。その時期は公認会計士の資格を取っても、どこにも就職できないということがありましたね。最近は景気も改善して国際会計基準などで監査がますます複雑になっているので、むしろ人手不足で公認会計士は引く手あまたでしょう。
B 監査業界は5年から7年周期で波打つんですよ。たとえば、2000年頃は仕事がいっぱいあって、どこの監査法人も「支度金を用意するからうちに来てよ」と積極的に会計士を採用するほど人手不足の時代。そこから03~04年になってくると人が余ってきた。今はアベノミクスでIPO(新規公開株)の件数なんかもすごく増えて会計士が足りないといわれているので、「どんな人でもいいから人がほしい」という感じですね。
監査に関する不祥事というのは、イケイケの時に起こるんですよ。そして不祥事が起きると、グーッと監査のクオリティを上げて、顧客企業を選別するので、会計士が余ってきてリストラするのです。すると、また景気が良くなってきて「人が足りない」ということになって、また人を採用し出す。人が増えるとまたクオリティが下がって不祥事が起きる。これが7年周期くらいでずっと続いています。