それに対し、朝日新聞はこう書いている。
「(議長役の和田氏が阿部氏の退任を採決にかけた)。当事者の阿部氏を除く10人で採決し、5対5の賛否同数で成立しなかった。今度は阿部氏が、経営方針の違いなどを理由に、議長役を稲垣士郎副社長(当時、67)に代わることを提案。6対5の賛成多数で通り、続いて和田氏解任の緊急動議が出された。和田氏を除いて採決すれば、6対4で可決する情勢だったため、議長の稲垣氏が和田氏に『自分から辞めたらどうですか』などと数回話しかけ、判断を求めた。和田氏は自ら辞任すると表明したという」
さらに、和田氏は「議長から言われ、どうしようもなくなった」と暴露している。
「FACTA」は「詐欺問題の責任を押し付け合い、昨年末から積水ハウスの取締役会が揉めるようになり、直近の取締役会では『和田氏と阿部氏がそれぞれ<弁護士を立てて争う>と怒鳴り合うほどの大荒れだった』と住宅メーカー関係者は打ち明ける」と、“奥の院”のトップ激突を明らかにしている。
日経新聞で和田氏は「(1月24日に)記者会見することも知らなかった。(中略)人事権はCEOにあるので、半年前に阿部氏が仲井嘉浩氏に(社長就任を)打診したなどあり得ない」と自分が出席しなかった社長交代の記者会見での出席者の発言を、きっぱり否定した。
こうなっては、“企業統治”の4文字は吹っ飛んでしまう。積水ハウスのガバナンスはどうなっているのかとの疑問が湧いてくる。
積水ハウスは2月20日、「(和田氏は)本人の意思で辞任し、世代交代した。解任という事実はない」とホームページに掲載した。取締役会の中身は「開示の義務がない」との立場だ。
63億円の詐欺被害
積水ハウスは2017年8月2日、「分譲マンション用地の購入に関する取引事故」について、驚愕の発表を行った。所有者になりすまし、土地を売買する“地面師グループ”の男女数人に63億円を騙し取られたというものだ。
同社によると、問題となったのは東京都品川区西五反田2丁目の広さ2000平方メートルの土地。17年4月24日、所有者とされる人物と購入する契約を結んだ。6月1日、70億円のうち手付金を含め63億円を支払い、分譲マンション用地として購入した。法務局に所有権の移転登記を申請したところ、所有者と称する人物から提出された書類が偽造と判明し、6月9日に却下された。それ以降、所有者と名乗る人物とは連絡が取れなくなった。
積水ハウスが手に入れたはずの土地はJR山手線五反田駅近くの、廃業していた「海喜館」という名の元旅館。旅館の所有者はA氏だが、本人が知らない間に本人確認用の印鑑登録証明やパスポートが偽造され、それを利用した“なりすまし犯”の女が63億円を受け取っていた。