2年前の凋落のイメージを覆すかのごとく、シャープの業績は好調だ。
シャープといえば日本有数の大手電機メーカーであったが、経営危機に陥り、2016年に台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業に買収された。だが1月31日発表の2018年度第3四半期決算では、売上高が前年同期比22%増の1兆8294億円、営業利益は同約4倍の703億円という、V字回復といえる数字を叩きだしているのだ。
テレビが中国で爆売れ、存在感薄れていたスマホ復活
また、携帯電話の分野でも国内シェアを伸ばしている。2017年の国内携帯電話端末のメーカー別出荷台数シェア(2月13日、MM総研発表)を見ると、圧倒的1位を獲得したのはiPhoneを擁するアップルだが、なんとソニー(3位)、京セラ(4位)、富士通(5位)をおさえシャープが2位となっているのである。シャープは昨年、フラッグシップモデルのブランドを「AQUOS R」に統一しており、ブランド力を高めたことが功を奏したようだ。
かつての凋落劇から一転、このようなV字回復を成し遂げた理由はいったいどこにあるのか。また、今のシャープは果たして本当に「復活した」といえるのだろうか。
今回は『シャープ「企業敗戦」の深層 大転換する日本のものづくり』(イーストプレス)の著者であり、技術者としてシャープに33年間勤務した後、現在は立命館アジア太平洋大学名誉教授を務める中田行彦氏に話を伺った。
鴻海流の経営に移行したことが間違いなく好調の要因
V字回復を成し遂げたシャープだが、鴻海傘下に入ったことが、どの程度の影響力を及ぼしていたのだろうか。
「シャープのV字回復の要因は、鴻海流経営となったおかげです。そもそもシャープが鴻海に買収されるほど経営不振に陥っていたのは、以前のシャープが市場の変化に対応できていなかったためです。鴻海流の経営で現在の世界市場に対応するようになったことが、間違いなく現在の好調の理由です」(中田氏)
その鴻海流の経営とは、「経費削減とスピード経営」だと中田氏は続ける。
「もともと鴻海は、アップルを重要顧客として持っているほど高い生産技術のある企業ですが、EMS(製造受託サービス)は利益率が非常に低く、自社ブランドもないといった点を課題として抱えていました。一方、シャープは研究開発に強みを持っている企業。そのため両者が組めば、シャープが研究開発し、鴻海が生産を担い、そして鴻海の販売網を使って販売をするといった強力な補完関係が生まれます。