介護大手ニチイ学館、劣悪な労働環境にスタッフから苦情続出 悪質な賃金抑制も露呈
額面で15万円程度ということは、手取りではもっと低くなる。これでは単身で生活を営むことはなかなか困難だ。「残業で稼げばいい」という意見もあろうが、そもそも医療事務を選ぶ際の理由として「資格を得て、時間的自由を確保して働きたい」という願望があったはずである。
同社で勤務する人の中からは、「月80時間は残業してるのに、月100時間程度しか働けないパートの人と給料があまり変わらないなんて……」と嘆く声も聞かれた。
また本件以外にも、現場で派遣、もしくは常勤で働くスタッフからは次のような怨嗟の声が上がっている。
・仕事を紹介すると言われたのに、されないまま
・資格を取るときに「準国家試験」「国家試験に昇格する動きがあります」と言われて受講を決めたが、そんな動きはないし、資格がなくても就ける仕事だった
・資格取得前に斡旋された仕事を始めた。無資格者は有資格者よりも時給が低いが、資格合格後も低い給与のままで1年以上放置され、差額も支払ってもらっていない
・紹介された仕事が取得資格とは関係ない雑用ばかりだったことを訴えたら、「まずは雑用から覚えるように」と諭され、2年勤めた。その経験を基に別の仕事の紹介を受けようとしたら「雑用しかしてないから紹介できない」と言われた
・取得資格に関する仕事紹介を希望したら「パートなら」「賞与ナシなら」「時給750円なら」ある、それ以外の仕事はない、とはねつけられた。その仕事がしたくて、受講料を払って資格を取ったのに……
・たまに休みをとると「常勤のくせに休みをとって……」などと言われる
・社員は派遣スタッフのことを考えない。自分たちはすぐ休みをとるくせに、現場の人間には厳しい。家庭の事情を伝えて勤務先に配慮してもらおうとしたら、機嫌が悪くなる。とても働きづらい会社
・ケアマネジャーの仕事を始めたばかりなのに、いきなり担当を30件以上持たされた。毎日残業ばかりなうえ、課題もあってやってられない
私もさまざまな情報ソースを当たっていたが、同社を擁護する声はほぼ聞かれず、多くがこのような非難であった。明らかに違法な実態も垣間見え、それが理由で同社を離れていく人も多い。ただそれでも、不況下では資格を得て安定的な仕事に就きたいと希望する人は多くおり、新たに同社講座の門をたたく人の補充には苦労しない、という構図なのだ。
では次回は、筆者が相談を受けた同社介護サービスにまつわるブラックな事件を紹介させていただこう。この事件はニチイ学館のみならず、あからさまに同社の肩を持つ裁判所の悪辣な実態を垣間見るにもうってつけのケースだ。
(文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト)