NHKの受信料をめぐるトラブルが後を絶たない。
昨年12月21日、NHK名古屋放送局の職員が、愛知県内の21世帯から徴収した受信料58万円余りを着服していたことが発覚し、懲戒処分となった。
同月14日には尼崎市議会議員の武原正二氏による、NHKの集金人とのやり取りを収めた動画がYouTubeに公開され、数十万回の視聴回数を記録。この集金人は、ある女性宅を夜遅くにしつこく訪問し、「放送受信料の件で訪問させていただきました」という手紙を、1日に17通も投函していたのである。動画のコメント欄には、この集金人の非常識な行動を非難する声が殺到した。
NHKの受信料については、同月6日に最高裁が受信料支払い義務を「合憲」と判断していた。かといって、集金人が何をしても許されるわけではなく、このような行為をすれば非難は免れないだろう。
そんななか、NHKの集金人の姿を動画に撮って動画共有サイト「YouTube」に投稿すれば、最高で30万円もの賞金が与えられるコンテストが開催され、話題を呼んだ。昨年9月から12月までを第1回とし、現在は第2回が6月末まで開催中のこのコンテストは、「NHKの受信料を支払わない」というテーマにさえのっとっていれば、動画の内容はコントや漫才、ドラマ仕立てなど、なんでもありという、非常にユニークなものとなっている。
コンテストの主催者は、2013年に「NHKから国民を守る党」を設立し、現在は葛飾区議会議員としても活動している立花孝志氏。そこでコンテスト開催の真意について、立花氏に話を聞いた。
賞金は警察における懸賞金のようなもの
まずはコンテストの概要と、開催に至るまでの経緯を聞いた。
「第1回のコンテストは、2017年12月31日までに動画の視聴回数が一番多かった人に30万円、二番目の人に10万円、三番目の人に5万円の賞金を贈るというキャンペーンでした。また、トップ3から漏れてしまっても、私が特に気に入った動画を投稿してくれた3人には『立花孝志特別賞』として5万円を差し上げましたので、コンテストの賞金は総額60万円でした。
なぜ開催を決意したのかというと、私のYouTubeチャンネルを見てくれているファンの人が『お金を出すので何かやりましょう』と、スポンサーに名乗り出てくれたのがきっかけでした。私はもともと、『NHKの集金人には、こんなに悪質な人がいる』という証拠を集めるために、『集金人が家に来たら動画を撮って報告してください』と、自分の動画やSNSで主張し続けてきたのです。つまりこのコンテストは、警察が『犯人の検挙に協力してくれたら懸賞金を支払います』と呼びかける感覚に近いといえます。
なお、現在は6月末まで第2回のコンテストを開催中で、ルールは変えていないのですが、今回は優勝者に30万円を贈るというだけで、それ以外の賞は予定していません。スポンサーもついていませんので、賞金は私の自腹といいますか、会社の経費としてお支払いするかたちです」(立花氏)
コンテストの認知度は、冒頭で触れたNHK絡みの事件を受けて次第に高まっていったように見えるが、昨年実施された第1回の応募件数はどれくらいあったのか。
「前回は、全部で28本の動画が寄せられました。視聴回数の集計期間は年末まででしたから、なるべく早くコンテストに応募してくれた人のほうが有利かと思いきや、実際には12月上旬に投稿された動画が約70万回と、もっとも多く視聴されたのです。
12月上旬というと、NHKの受信料支払い義務について最高裁が合憲と判断したタイミングなので、もしかするとその影響があったのかもしれません。事実、私個人のYouTubeチャンネルも、判決が出る前に比べて視聴回数が5倍も増えました」(同)
あえて集金人をもてなす動画や、オリジナルゲームを自作した猛者も
入賞すれば最低でも5万円の賞金を獲得できるとだけあって、前回のコンテストの応募者は、誰もが本気で挑んでいたに違いない。具体的には、どのような作品が寄せられたのか。
「面白いところだと、『棺桶しかない家にNHKの集金人を呼んで接待してみた』という内容の動画を、あるユーチューバーが投稿してくれました。部屋にNHKの放送を受信できるテレビが置かれていないことを集金人に見せ、受信料を支払う義務がないことをアピールするわけですが、それだけでなく集金人に食べ物を差し出したところ、ケーキは食べたけれども寿司は食べなかったという内容です。
ほかには、私が掲げている『NHKをぶっ壊す!』というスローガンにちなんで、ある中学生が『NHKをぶっ倒クエスト』というロールプレイングゲームをつくってくれました。動画ではなく、ゲームでコンテストに応募してくるというのはトリッキーだと思いましたが、棺桶の動画と併せて『立花孝志特別賞』に選んでいます」(同)
最後に、現在行われている第2回コンテストの応募状況や、立花氏がこの先どういった活動を計画しているのかを聞いた。
「前回のコンテストは正直、一般の人々から反響があったというよりも、メディアでいろいろと取り上げていただいた印象が強いですね。第2回も、現時点(※取材は4月3日に実施)での投稿動画は10本くらいしかないのですが、このようなコンテストは継続することに意味があると思っています。
先ほどもお話ししたように、私の最大の目的は『NHKの集金人には、これだけ悪どい集金をしている人がいる』という証拠を取ることなので、そのためには動画に収めてしまうのが一番です。そこで、みなさんには、NHKの集金人が家に訪ねて来たら撮影して、私のところへ動画を送ってほしいのです。
最近ですと、視聴者に私の家まで来てもらい、その人に代わって私がNHKと交渉するという動画を公開しました。私のYouTubeチャンネルでは森友学園問題も扱っていますが、NHKとの交渉動画のほうが再生回数ははるかに伸びているため、やはり視聴者にとっても関心の高いテーマなのでしょう。こちらは本来、コンテストとは別の企画でしたが、もはや視聴者参加動画として、コンテストの選考対象に含めようかと考えているところです」(同)
立花氏は「今後も、このような取り組みを継続していく」と語る。コンテストの最新情報は、立花氏のYouTubeチャンネル上で随時公開中だ。
(文=A4studio)