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任天堂、Switch大ヒット&利益1兆円を導いた「完璧な販売戦略」

文=編集部
任天堂、Switch大ヒット&利益1兆円を導いた「完璧な販売戦略」の画像1Nintendo Switch(「Wikipedia」より)

 東京株式市場で人気が高い銘柄のひとつが任天堂だ。

 2017年度の「株式時価総額の増加額ランキング」で、任天堂が首位に立った。1年間に時価総額を2兆9785億円増やし、期末の時点で6兆6386億円である。

 17年3月3日に発売した新型ゲーム機「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」は、ようやく最近になって品薄状態が解消されるほどの大ヒットとなった。

 16年6月28日に1万3360円の年間安値を付けた任天堂の株価は、スイッチの販売好調を受けて上昇し、18年1月24日に4万9980円と5万円の大台目前に迫った。だが、米国株の乱高下もあって、ここ2カ月は4万6000円前後でもみ合っている。

 株価は07年10月に7万円を突破し、7万3200円と上場来高値を記録した。この時点で時価総額は10兆円を超えた。そして好調の今、07年のピークにどこまで迫るかに期待が集まっている。

 業績はV字回復した。18年3月期連結決算で売上高は前期比2.2倍の1兆556億円。9年ぶりの増収で7年ぶりに1兆円を超えた。営業利益は同6倍の1775億円、純利益は同36.1%増の1395億円だった。

 スイッチのヒットが、低迷していた業績を一気に回復させた。スイッチは1年間で1505万台売れた。

 新型ゲーム機の販売でもっとも重要なのは、立ち上げ時期だ。魅力的なソフトがあれば、ゲーム機本体がさらに売れるという好循環をもたらす。

 スイッチは絶好のスタートを切った。「スーパーマリオ オデッセイ」が1041万本、「マリオカート8 デラックス」が922万本、「Splatoon 2」が602万本など、ソフトの販売本数は6351万本に達した。全世界で1億台以上売った06年発売の「Wii(ウィー)」に匹敵するペースで売れている。

 ゲーム機の売れ行きはソフトに左右される。12年発売の「Wii U(ウィーユー)」の販売はソフト不足で業績回復の起爆剤にならず、17年3月期まで8年連続で売り上げが減った。

 スイッチは15年に急逝した前社長、岩田聡氏が開発を指示した“遺産”である。急遽、リリーフ役として社長に就いた君島達己氏は、ソフト不足に苦しんだWii Uの反省から、有力なソフトを定期的に投入する計画を立てた。2~3年と想定していたソフトの開発期間を5年に延長。スイッチの発売時期と、大型ソフト投入のタイミングを合わせた。

 ほかのソフトメーカーにもゲーム機の詳細な機能を公開し、ソフトの開発を促した。魅力的なソフトが続くよう、綿密な計画を錬ったことがスイッチの成功をもたらした。

実務家の新社長に課せられた「スイッチの次」

 任天堂は、スイッチの成功と業績のV字回復を機に、若返りを図る。6月26日開催の株主総会とその後の取締役会で、古川俊太郎取締役常務執行役員が社長に昇格する。君島氏は相談役に退く。

 君島氏が社長に就任したのは、スマートフォン(スマホ)向けゲームなどに押されて苦戦している時期だった。君島氏が自らに課したのは、岩田氏の遺産であるスイッチの立ち上げと次の世代にバトンを渡すこと。

 次期社長に内定した古川氏は、1994年に早稲田大学政経学部を卒業し、任天堂に入社。一貫して経理畑を歩いた。30代半ばまでの11年間、ドイツにある欧州統括会社に赴任し、経営管理の経験を積んだ。君島氏が社長に就いた15年に経営企画室長に就任し、ゲーム機の販売計画づくりに携った。そして翌16年、取締役に就任した。

 任天堂の経営はカリスマが引っ張ってきた。創業家の第3代社長・山内溥氏と、前社長の岩田氏だ。岩田氏は天才プログラマーとして知られ、山内氏が三顧の礼をもって迎え、42歳の若さで社長になった。2人とも「おもしろいソフトをつくる」ことを追求してきた。

 その後の社長は、君島氏が旧三和銀行出身、古川氏は経理畑出身の実務家。ゲームの開発者たちからは、「古川とは何者だ?」との声も上がっている。

 古川新体制は、人気タイトルを次々に投入し、スイッチの販売台数の上積みを狙う。目玉となるのは、全世界でヒットした「大乱闘スマッシュブラザーズ」の新作だ。

 19年3月期はスイッチ本体を2000万台、ソフトを1億本売る計画だ。売上高は前期比13.7%増の1兆2000億円、営業利益は同26.7%増の2250億円、純利益は同18.2%増の1650億円を見込んでいる。

 18年3月期はスイッチ本体と関連ソフトが売り上げ全体の7割を占めた。スイッチ頼みの一歩足打法である。

 任天堂の据え置きゲーム機の製品サイクルは、これまでも5年程度である。スイッチもやがてピークアウトする。スイッチの次を生み出せるかにかかってくる。

 古川氏は社長就任会見で「この業界は天国と地獄しかない」と語る。任天堂はこれまでも、ゲーム機の当たり外れで天国と地獄を行き来してきた。

 スイッチ一本足打法のリスクから抜け出すため、スマホゲームや映画などのキャラクタービジネスに活路を見いだすことができるかが、新社長の重要な経営課題となる。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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