羽田国際線発着枠拡大の争奪戦
ANAとJALの18年3月期の連結決算は明暗が分かれた。
ANAHDの売上高は前期比11.7%増の1兆9717億円、純利益は45.6%増の1438億円。国際線が好調で、純利益は3期連続で過去最高を更新した。
一方、JALの売上高は同7.3%増の1兆3832億円、純利益は17.5%減の1354億円。国際線でビジネス客などの利用が伸びたが、旅客システムの更新費用や前期まであった法人税等調整額がなくなり税負担の増加が重荷となった。
ANAHDの純利益が、経営破綻後に税制の優遇措置を受けているJALを上回ったのは、12年9月にJALが再上場してから初めてのことだ。JALの税制優遇措置がなくなり、同じ土俵での競争に突入した。
20年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、都心上空のルート変更に伴い、東京国際空港(羽田空港)の国際線の発着枠が増える。増加する50便の配分は18年末から19年初めに決まるとみられている。
エアライン業界は政権の意向に左右される。安倍晋三首相の「JAL冷遇、ANA優遇」は徹底している。政府専用機の整備をANAに委託したことから、国を代表する航空会社、“ナショナル・フラッグ・キャリア”の座はJALからANAに交代した。
というのも、JALは民主党政権下で再生に成功した唯一の企業だからだ。会長としてJAL再生に辣腕を振るった京セラ創業者の稲盛和夫氏は、路線開設などに政治家が介入したことがJAL倒産の最大の原因とみなした。そのため「永田町(政界)や霞が関(官界)にすり寄るな」と言い続けた。政治家や官僚に振り回される航空会社のあり方を根本的に変えようとした。
しかし、民主党から自民党に政権が交代し、安倍政権が誕生したことでJALには逆風が吹き付け、冷や飯を食うことになった。
発着枠の獲得には、政治力がものをいう。官邸と太いパイプをもつANAと、パイプが目詰まりした状態のJALでは、戦う前から勝負がついている。
今回も、ANAが羽田国際線の発着枠争奪戦でJALに圧勝するのは確実といわれている。発着枠の増枠をテコに、ANAはJALのドル箱であるハワイ・ホノルル路線に攻め込む。超大型旅客機エアバスA380機を投入してJALからシェアを奪い取る作戦だ。
エアライン版のハワイを舞台にした“仁義なき戦い”が始まる。
(文=編集部)