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舘内端「クルマの危機と未来」

EVの日産NOTE e-POWERが、北海道で売れ始めた「当然の理由」

文=舘内端/自動車評論家
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EVの日産NOTE e-POWERが、北海道で売れ始めた「当然の理由」の画像1日産NOTE e-POWER(「Wikipedia」より/TTTNIS)

EVが北海道で売れる?

 
 昨冬から積雪地帯で二輪駆動のEV(電気自動車)が売れ始めた。次の冬には積雪地でもEVを選ぶ手もありそうだ。北海道で人気のEVは、日産自動車が販売に力を入れ「電気自動車のまったく新しいカタチ。」と呼ぶNOTE e-POWERである。ガソリンを入れておけば電欠の心配がないこともあって、売れ行きは北海道から東北、北陸へと広がっているという。

e-POWERはHV

 NOTE e-POWERはエンジンが発電機を回して小型のリチウムイオン電池を充電する。タイヤを駆動するのはモーターである。正確にはEVではなくHV(ハイブリッド車)である。発売直後から人気を博して小型車部門の販売トップに躍り出た。その勢いが降雪地帯にも及んだというわけだ。雪道に強いのだ。

 走破性能はエンジンの四駆と同等で、維持費(燃料代)は比べものにならないほど安く、寒い中でガソリンスタンドに行く必要もなく、静かで乗り心地が良い。最新のEVの暖房はフルオートエアコンである。家庭で使われるエアコンと同様のヒートポンプ式だ。航続距離が極端に短くなるわけではなく、暖かい。

 シートヒーターやらハンドルヒーターが付く車種が増えてきたこともあり、電池も改良され低温でも性能が落ちにくく、寒冷地で航続距離が短いという弱点もなくなりつつある。どうやら、「EVは雪国では使えない」というのは都市伝説になったようだ。

四駆はABSに勝てるか

 滑りにくさを過信して四駆で雪道に出掛けると、下り坂で思わぬスリップ事故に見舞われることがある。滑りにくいのでサマータイヤのままで大丈夫だろうと積雪地帯に出かけてはいけない。四駆も二駆も制動力は同じである。そこで登場するのがABS(アンチロックブレーキシステム)である。

 タイヤが滑るのは、タイヤの回転が止まった時(タイヤロック)だ。ブレーキをかけてタイヤがロックすると、路面との摩擦力が急激に低下してしまう。そこでロックしたらブレーキの力を緩め、タイヤを再び回転させ、制動力を確保する。回転を始めて摩擦力を回復できたら、再びブレーキの力を強め、再びロックする――。これを繰り返して制動力を確保するのがABSである。

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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