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舘内端「クルマの危機と未来」

EVの日産NOTE e-POWERが、北海道で売れ始めた「当然の理由」

文=舘内端/自動車評論家
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 発進には強い四駆も、制動時にはABSに勝てない場面もある。ただし、ABSも万能ではなく、制動距離がかえって延びてしまう場合もある。過信は禁物だ。だが、EVの回生ブレーキは違う。これが積雪地でEVが喜ばれる秘密のひとつだ。

ABSは回生ブレーキに勝てるか

 
 EVでは減速時にモーターを発電機に替えて走行エネルギーを回収し、電池を充電する。機械式ブレーキとは違い微妙な制動が可能だ。プロドライバーのようなスムーズな制動が一般ドライバーでもでき、ガクガクとすることがないのでクルマ酔いもしにくい。

 制御プログラムを変えることでロック寸前まで制動力を高められるので、電気フォーミュラーカーレース(フォーミュラーe)では、カーブぎりぎりまでブレーキをかけるのを遅らせられ、カーブ手前でエキサイティングな競り合いが見られる。

 これは、電気による制御は1万分の1秒という短い時間で可能だからだ。ただし、プロドイバーもクラッシュする。私たちはABSに頼らず運転したい。

TCSもEVなら満点

 
 TCS(トラクション・コントロール・システム)は、発進時や加速時のタイヤの空転を防ぐシステムで、雪道など滑りやすい路面で威力を発揮する。TCSの機能はABSとよく似ている。ABSが制動力を制御するのに対して、TCSはエンジンの回転力を制御する。アクセルを踏み過ぎたり、滑りやすい路面だったりして、タイヤが空転すると自動的にアクセルを緩め、空転を防ぐ。だが、エンジンの制御は100分の1秒ほどである。

 一方、EVではタイヤの回転力をモーターとインバーターで電気的に制御するので、回生ブレーキと同様に1万分の1秒で回転力の制御が可能だ。これは時速100キロメートルの場合、走行距離でいうと2.8ミリメートルに1回、制御が行われるということである。

 同じTCS機能であっても、EVであれば満点だ。ちなみにスタートから時速100キロメートルまで加速する時間を競う競技では、高性能EVがエンジンスポーツカーを凌駕するのは、スタート時のタイヤの空転が少ないからだ。しかし、街中でタイヤを空転させるまでアクセルを踏むのは厳禁である。

 EVは発進でも、制動でも安全で雪道で強いことが、まさに積雪地帯で売れるようになった理由である。
(文=舘内端/自動車評論家)

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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